LIVE ROUND ABOUT JOURNALの2日目がおかげさまで無事終了しました。
1日目は約220人、2日目は約240人の方に来て頂くことが出来、全体にいくつか反省点も残るものの、イベントとしては概ね成功させることができたと言えると思います。内容についても、1日目はオーディエンスからの質疑応答も含めて活発な議論が展開されたのに対し、2日目は途中に「批判的工学主義」のセッションを挟んだこともあり、比較的テーマに沿った、軸のある議論が展開されました。その意味で1日目で問題の枠組みを印象づけ、2日目に方向性を提示する、という私たちの狙いはほぼ実現できたように思います。
その狙いの背景には、日本の大人しいレクチャーのあり方を変えたいという思いがありました。このブログでは初期の頃、ヨーロッパ人建築家のレクチャーリポートを盛んにアップしていましたが、ヨーロッパやアメリカで行なわれているレクチャーがトピックを提示して、建築家同士の議論の場になっているのに対して、日本人建築家のそれは新作発表と裏話に終始する場合も多く、観客も建築家の話の内容を評価するというよりは、顔写真と経歴(大学や出身事務所など)ばかりに注目する、という状況がしばしばみられ、なんとかできないかと思っていました。
ここではそのような状況に対して新しいレクチャーのあり方としてセッション形式にして複数の建築家が同時にレクチャーする平面を整え、かつそれを横断して俯瞰するモデレータを他分野に方にお願いすることで文脈を提示し「内容を聞く」ものにしようとしました。必ずしも徹底できなかったのですが、各レクチャーにタイトルをつけてもらうようお願いしたのも、作品ではなくトピックやストーリーを提示してもらう、という意図があったからでした。名前だけを見て判断するのではなく、「議論の場」そのものに参加したいと思えるようなイベントに近づけたいという思いがありました。
いくつかのブログなどでの反応をみる限り、その試みは一定の成果を上げているように思えます。
各レクチャラーの皆さんは、15分という短い時間での発表にも関わらず、同世代が集うということもあり、とても気合いを入れて準備して下さいました。総括討論でも自作だけではなく、他の建築家の方々の主張に積極的に繋げるかたちで意見を述べて下さり(これは日本のレクチャーではなかなか見られない)、次第にある熱気が生まれていったように思います。「議論する」ということの熱さ、面白さを再認識させて下さいました。
また、南後由和さんとドミニク・チェンさんのモデレーションも素晴らしいものでした。南後さんは19日の議論で、「建築の可能性とは何か、答えを用意して下さい」と問いかけ、建築家の社会的役割の議論を提起して下さいました。ドミニクさんは26日の議論で、情報分野での議論を紹介しながら、「アーキテクチャー型権力」と建築の関係について、議論を開いていってくれました。建築プロパーではないけれども、このふたりなら絶対に面白い、と根拠なく確信しむちゃ振りしてしまいましたが、こちらの予想など遥かに越えて、素晴らしい議論を誘導してくれました。
そして学生スタッフの皆さんは、卒業設計前や設計課題の締め切り前の重要な時期にも関わらず、文字起こしや会場運営などのサポートをしてくれました。彼らのピンと張りつめた緊張感や統率の取れた姿が訪れた人に驚きを与えたことは間違いありません。
最後にスポンサーでもあるINAXマーケティング部とINAX:GINZAの皆さんには、告知や会場のセッティング、当日のサポートなど、何から何まで、本当にお世話になりました。2日とも予定時間を大幅に押してしまいご迷惑をお掛けしてしまったのですが、私たちの作業を暖かく見守って下さり、出来上がった原稿をコピーするため、駆け回って下さいました。
以上、このイベントを盛り上げて下さった全ての皆様にお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
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当日の様子を軽く振り返っておきます。
8:50INAX集合。準備を始める。
9:50スタッフミーティング。その後学生が集まり全体ミーティング。前日に伊庭野(元アメフト部)がハッパを掛けた結果、ほぼ全員が遅刻なしで揃う。「試合前のロッカー室」みたいな雰囲気。
12:00お約束の牛丼ランチ。緊張する。
13:00スタッフ全員で写真撮影。客が入り始める。
13:50いよいよ2日目開始。トップバッターは釜萢誠司+針谷将史。あえてふたりばらばらに話す。針谷が「精度」について語り、釜萢が「制度」について語り、表層と深層の対比が浮かび上がっているのが面白い。続いてg86。途中スライドが固まったりしてヒヤヒヤしたが、彼らの勢いと行動力が伝えられれば、と思う。
15:00次は伊藤暁。「適当に付けた」などとポーズをとりつつ話す「自律する建築」というテーマを、ドミニクがインターネットの議論にうまく繋げてくれた。続いて柄沢祐輔は「風景に論理を導入する」と題し、アルゴリズムを用いた設計論をプロダクトからインフラまでスケールを横断して紹介。
16:00自分の番である。Apple Storeでも話した設計プロセス論「『流れ』を設計する」を発表。平田晃久さんは「Animated Topolography(動的な空間的地形?)と愛の力」と題し、幾何学と行為の緊張関係を語る。トップダウン的に形式を与えようとする平田さんに対し、徹底的にボトムアップ的に形式を成長させていく僕のやり方を対比的に示すことで、「形式と生活」という議論の軸が浮かび上がる。
17:00引き続き「批判的工学主義」について。あえてこの位置に挿入したのは、議論の流れを意識してのこと。柄沢君、南後君と3人でスイッチしながら話す。倉方俊輔さんにマイクを振ったところ、「情報分野での『アーキテクチャー型権力』と実空間のそれは違うのではないか」と指摘されるも、まさにそこが議論のミソ。スーパーマーケットの分節を情報空間的に「あえて誤読する」という戦略を説明することができた。さすが鋭い。
18:00最後のセッションは中村拓志さん。女の子が無邪気に鳥に餌をやったり、編み物をする「Dancing Tree, Sinnginng Bards」の写真をバックに、淡々と環境問題を語る。まさに「愛と力」!!インタビューのときにも感じたが、その場の空気を読んで、ささっとこちらの枠組みに乗ってくれる感じが素晴らしい。
そして吉村靖孝さん。「動物と建築」と題して始まったレクチャーのスタートは「せんだいメディアテーク」2等案!!先ほどの情報空間論と完璧にシンクロして興奮。1995年のこのコンペこそが、批判的工学主義の文脈に照らしても歴史的事件だったのだと再認識。レクチャーでは阿見町の「平和資料館」のような空間的な主題(表層)を展開するプロジェクトと、「ソレイユ・プロジェクト」のようなシステム的な主題(深層)を展開するプロジェクトが並走しているところが面白いと感じた。
19:10最後の総括討議。マイクを回しつつ話す。特定の人物に質問が集中するというよりは、「批判的工学主義」というトピックを中心に議論が進む。冒頭で吉村さんが「方法論が違えども、全部同じに見えるんじゃないか」「自然をメタファーにすると建築はいらなくなってしまうんじゃないか」と心配そうに(?)問題提起。確かに1990年代は建築家不要論がもっとも強かった時期だったが、今こそそれを覆す必要がある。
佐藤敏宏さんからは「建築家の倫理をどう考えるか」と重い質問が飛ぶ。倫理の依って立つ命題の見えない時代の建築家の倫理についてこそ、私たちは考える必要がある。松川昌平さんは「建築の寿命に比べて社会的なプログラムの寿命はあまりにも短い。社会的なプログラムを根拠に建築を構想するのは危険じゃないか。」と問題提起。19日組と26日組で多少温度差があるとすれば、26日組は社会的プログラムを引き受ける、という姿勢を明快にしているという点だろうか。その違いがはっきりしたとすれば、それはむしろよいことだ。立場の違いを見出したあとで、意見交換していければいいと思う。
21:30様々な議論が提起されたが、ここで一旦総括討議終了。編集作業は押しに押してしまい、フリーペーパーを発刊できたのは結局22:00少し前。前回の反省を活かしたはずが、逆に時間がかかってしまった。議論に出てくる固有名が難しく、起こしに時間がかかってしまったらしい。待って下さったオーディエンスの皆さんには感謝しなければならない。メンバー全員で1冊1冊にシールを貼りつつ、丁寧に渡す。
22:10懇親会スタート。最後のスピーチでINAXの虫鹿さんが「ミーティングで『革命を起こす』と言っているのを聞いて最初は引いていたけれど、終わってみて本当にそうかも知れないと思えた」とおっしゃって下さり感動した。ずっと暖かく見守って下さったINAXの皆様には心から感謝したい。
22:40撤収を完了して、2次会に流れる。ここで学生諸兄と別れる。学生の1人に「楽しかったです」と言われ、再び感動。今まで手伝いをお願いして文句を言われたことはなかったが、「楽しかったです」とストレートに言葉にして言われると嬉しい。彼らが今回のイベントに参加したことで何を感じたか、じっくり話を聞きたいところだが、それは後日のお楽しみということにしておこう。
3:30「アルゴリズム」「愛と力」「モテvsヲタ」を軸に2次会も程よく盛り上がったが、閉店となり店を出る。3次会の店へ向かって、みんなで銀座の街を歩く。なんという爽快さ。
歩きながらふと考える。このようなかたちでイベントを開催できたのも、ブログだったり、勉強会だったり、展覧会だったり、些細なきっかけと出会いのおかげだということ。TEAM ROUND ABOUTにしても、仕事帰りに夜中にファミレスで議論していた連中がいつの間にか力をつけ、世に問いかけるような活動を仕掛けるほどに成長してきている。メンバーの高いモチベーションによって、ほどよい緊張感が維持されてきたことは喜ばしいことだが、こういう楽しさをいつまで続けることが出来るのか、先のことを考えると逆に身が引き締まる思いだ・・・。
6:00まったりと3次会も終了し、散会。夜が明ける。新しい時代の幕明け・・・を勝手に予感しつつ皆と別れ、地下鉄に乗る。
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・・・というわけで長くなりましたが、イベントやフリーペーパーの感想など頂ければ幸いです。今後ともROUND ABOUT JOURNALの活動をよろしくお願いします。
fujimura