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2008年02月 アーカイブ

2008年02月02日

インタビュー/スタディ/オープンデスク募集

東工大建築学科の機関誌『Ka』の取材が本格化。数年前から年に1度の発行となり、今号から学生中心の編集体制へと移行することとなった。歴史意匠系の各研究室の博士課程の学生8名を中心に会議を重ね、企画がまとめられた。

29日、この日は最初のインタビューで安田幸一先生の話を伺いに安田アトリエへ。学校そばのコンビニの裏の、ビルの1階を改装したアトリエ。ガラスブロックのファサードがきれいで、こんな近くにあったとは知らなかった。「言葉とデザイン」を切り口にインタビュー。日建設計に長く在籍された後で大学に戻って来られた先生ならではの独特の作家像が興味深かった。

31日は建築史の藤岡洋保先生へのインタビュー。スタンスが明快で、話に全く淀みがなく、熱い。現代の問題を解決するために過去の事例を参照する、というデザイナー的な視点や、堀口捨巳や「巨大建築論争」の神代雄一郎の話が興味深かった。

大学院1年生の頃、藤岡先生の授業で建築評論を書く機会があった。特定の建築を選び、それを同時代の他の建築と比較したり、同じ作家の後の作品を参照したりして、その作品を位置づける、という課題だった。僕たちは「パレスサイドビル」(日建設計/林昌二)を選び、丹下作品の香川県庁舎などのコアシステムと比較したり、「日比谷電電ビル」(日本電信電話公社施設局建築部/國方秀男)と比較したりして、読み方を探ろうとした。この経験を通して、建築を批評することの面白さを知ったような気がする。藤岡先生の話を伺いながら、懐かしく思い出す。

2月1日、GAの山口さん来社。『GA JAPAN』の記事にて先日のイベントLIVE ROUND ABOUT JOURNALを取り上げて頂くことになり、インタビューして頂いた。来週は『新建築』にて南後君、ドミニク君と3人で鼎談の予定。台湾の雑誌『Dialogue』の取材も決まった。ありがたい。

この日は打ち合わせを梯子する。藤村事務所では現在、大型のビルのプロジェクトが3件進んでいる。いずれも400-500坪くらいの規模で、今年から来年に掛けて竣工する予定。そのうちK-PROJECTは建て方が佳境、5月末には竣工する予定である。

その他にこの年明けから住宅プロジェクトが1件始まった。独立住宅の設計は初めてだが、事業ビルとは異なる面白さがあり、とても楽しく設計を進めさせて頂いている。ビルは今まで1/100でスタディしてきたが、ここでは篠原一男に倣い、1/50でスタディを進めている。

今のところいつものように線形に積み上げて、ボトムアップしていくスタディを展開。今、ようやく005案に辿りついた。だんだんスタッフの体(頭ではなく)が追いついていけば、加速度的にスピードアップしていくだろう。3月末までの設計期間にどれだけ飛躍できるだろうか。

春休みのオープンデスクの募集を始めました。たった2週間だけですが、毎日一緒に議論しながら模型をつくる経験は、きっと4月からの生活を変えます。一緒に歴史をつくりたい人はぜひこちらへ。意欲ある皆さんの応募をお待ちしております。

先日のイベントLIVE ROUND ABOUT JOURNALについて、TEAM ROUND ABOUTメンバーの松島潤平伊庭野大輔藤井亮介が詳細にリポートしていますので、よかったらご覧になって下さい。

出演者のひとり、大西麻貴さんも、熱い感想を書いてくれています。

会場に聴きに来てくださった方の反応も嬉しいですね。佐藤敏宏さんは偶然来られたそうですが、イベントの主旨を即座に理解して、朝まで議論におつきあい下さいました。その他、直接お会いしたことはない方ですが木村覚さんという方が「批判的工学主義」について、詳細に感想を書いて下さっています。

ROUND ABOUT JOURNALvol.3はINAX:GINZAにて配布中です。今後建築系書店等で配布して頂く予定です。まだまだ在庫がありますので、配布に協力して下さる方(特に地方の方歓迎)には100部ずつお送りします(学生の方は無料)。送り先の住所、氏名、学校名or勤務先、学年を明記の上、藤村事務所までご連絡下さい。連絡先はこちら。お待ちしております。

fujimura

2008年02月03日

ROUND ABOUR JOURNAL vol.3 全コンテンツ解説

ROUND ABOUT JOURNAL vol.3について配布に協力して下さる方を募集したところ、早速メールが続々。東京近郊、関西圏、地方など地域も様々。学生だったり社会人だったり属性も様々。ただ一様に熱い文面で嬉しくなる。月曜日から順次発送しますので、よろしくお願いします。

さて、恒例(?)の全コンテンツ解説を。

ROUND ABOUR JOURNAL vol.3 特集「都市ビューティ革命」

「1995年以降の建築・都市」をテーマにしたvol.1+2に続く今回は「表層と深層の関係」にテーマを絞って構成。「『批判的工学主義』は『都市ビューティ革命』となりうるか」と問いかけるイントロに続いて11本のインタビュー、座談会、メール対談、レポート、論考を収録し、濃密な議論を展開しています。

シュウ・ウエムラ「からだの深層からきれいになる」
巻頭はビューティ界の巨匠、シュウ・ウエムラ氏。植村さんの提唱されている「美容と健康の関係」は、まさに表層と深層の関係。とても気さくに、かつ論理的にお話を展開して下さいました。特に後半の都市について論じるくだりは新鮮。最後に藤井亮介の小論「美を培う」が補完し、全体として私たちの主張を美しく翻訳しくれています。

柄沢祐輔+ドミニク・チェン+南後由和+藤村龍至「次世代の東京を描く」
「ビューティ」から一転して男子4人組によるガチンコ座談会へ。「批判的工学主義」を提唱する柄沢+南後+藤村と「プロクロニズム」を提唱するチェンの意見交換しつつ、「批判的工学主義」の行先を議論しています。収録は「批判的工学主義」を提唱した東大工学部2号館にて。

平田晃久「泉北ニュータウンから『生命のような建築』を考える」
大阪府堺市の泉北ニュータウン出身の平田さんに、偶然にも同じニュータウンの出身である南後君がインタビュー。堺は古墳が多いことでも知られていますが、「横から見るとただの森だけど上空から見ると幾何学」という古墳のもつ二重性についてや、ニュータウン=均質という図式的理解を超えて、工学的空間に生命性を見出すという思考など、あえて『東京から考える』的な自分語りをして頂くことで、平田さんの持論を引き出すことができました。

中村拓志「『おもてなし』のアーキテクチャー」
このインタビューを読んで中村さんの印象が変わった、という反響をたくさん頂いています。中村さんの展開する「恋する建築」というコンセプトを「アーキテクチャー型権力」の文脈と接続して議論することで中村さんの批評的側面が引き出せたのではないかと思います。

吉村靖孝+吉村英孝「自由を得るために深層を開く」
レッシグを引用して議論を展開している数少ない建築家の一人である靖孝さんと、塚本研の先輩で個人的も関わりの深い英孝さんのおふたりに、初めて同時にインタビュー。MVRDVやアトリエワンなど、時代的に影響の強かった建築についてもいろいろ議論できて楽しかったです。

藤原徹平「『エンデ的建築家像』をもって『科学的公共性』をめざす」
勝矢武之「深層から建築家の立場を考える」
最も組織的なアトリエ事務所のひとつである隈事務所の藤原さんと、最もアトリエ的な組織事務所のひとつである日建設計の勝矢さんへのインタビューを並列させています。グローバル・キャピタリズムの最前線で活躍されるおふたりと、建築家の社会的役割や位置づけについて議論しています。シチュアシオニスト研究の修論がベースになっているという藤原さんと、「降りる自由」を担保するべきだという勝矢さんの主張は、ともに資本に対してクールなのが意外で興味深いです。

長坂常「状況を直視して、ギリギリまでデザインをしないというアプローチ」
武藤圭太郎+虫鹿元博「タイルの可能性を表現し、新たなコラボレーションを誘発する場」
建築家の社会的位置についての議論が続いた後で、現場の状況にフォーカス。まずデビュー作「haramo cuprum」以来、郊外型集合住宅のプロジェクトを手がける長坂さんに、郊外的文脈で働く工学の力のありようと、それに立ち向かう熱い姿勢に敬意を表しつつインタビュー。最新作sayamaのプロセスが前回のインタビュー「ちゅうぶらりんのまま設計する」にそのまま連続しているという話がとても面白い。
次に前田則貞アトリエの武藤さんと、INAXの虫鹿さんにINAX:GINZAの改修プロジェクトについて伺いました。1Fエントランスホールの3次曲面の設計・施工プロセス、90年代のガラス建築ブームのあとでタイルメーカーが模索したマーケティング戦略など、担当者ならではのリアルなお話を伺えました。

岡部明子「EUの表層と深層」
現場から一転してアカデミックかつグローバルに。バルセロナの磯崎アトリエに勤務し、ヌーベルやコールハースなどの建築家にインタビューした処女作『ユーロ・アーキテクツ』から『サステイナブル・シティ』を経て、最近の研究に至るまで、岡部さんのライフ・ヒストリーを語って頂きました。建築家という表層から都市政策という深層へ、岡部さんらしい批判的な眼差しが伺える、貴重なインタビューに仕上がっています。

エイドリアン・フォーティ「カルチュラル・メディアとしてのコンクリート建築」
昨年6月に来日した『言葉と建築』のエイドリアン・フォーティの日本滞在記+ミニ・インタビュー。「大切なことは『批評的であろう』と考え続けることです。」というメッセージは、批判的工学主義を提唱する私たちへのエール!?

マティアス・シューラー「建築と設備のあいだ」
SANAA「ツォルフェライン・スクール」において採用された「アクティブ・インシュレーション」など、独創的なアイディアで注目を集めるエンジニア、マティアス・シューラーへのインタビュー。伊庭野が日建設計の研修旅行でドイツに行った際に採って来た素材を再構成しています。

松島潤平「遠く離れた都市を愛し、力強く変える方法」
国際コンペで必ず問題となる、地域性、場所性についていかにアプローチするか、という課題について、イスタンブール国際コンペを担当した経験からケン・ヤング、MVRDV、隈研吾、黒川紀章、ザハ・ハディト、フクサスらを比較し、批評しています。

伊藤暁「『キティちゃん』問題~複数の作家性が並列可能なプラットフォームをめざして~」
前回藤本事務所の青木君と展開して好評をいただいたメール対談「若手からみるワカテ」の第2弾。今回はヨコミゾ事務所在籍時に「富弘美術館」などの現場を担当した伊藤暁君に登場して頂きました。「キティちゃんの張り紙でも貼れちゃう気分だった」という感覚は、「富弘」~「アルメラ」~「せんだい」を繋ぐ表層と深層を分ける設計手法の流れを位置づけ、あらためて「富弘」の提起した「メタ設計」という問題が再浮上させているように思えます。

g86「冷静と情熱のアーキテクチャー」
ラストは学生は常に建築家や社会学者の出す2次3次情報しか得られない、という自らの情報環境に疑問を持ち、自らインタビューをまとめてネットで公開するという活動を展開し始めた東工大の学部3年生4人組g86へのロングインタビュー。彼らの分析力(冷静)と行動力(情熱)に満ちた言葉は、荒削りではあるけれども、メディアの言説に踊らされ、トートロジーに陥りがちな同世代の学生たちに、いい刺激を与えることでしょう。

益子悠「建築マンガ」
vol.1+2に引き続き、mashcomixの益子悠さんにマンガを描いてもらいました。今回のテーマである「表層と深層」をもとに議論し、干支が次々と脱皮しながら繋がっていき、さらに表紙の女の子に繋がって表紙と裏表紙を繋ぐという、益子さんらしい、クールでフォルマリスティックなマンガに仕上げて頂きました。

以上、全コンテンツ解説でした。

ROUND ABOUT JOURNALvol.3はINAX:GINZAにて配布中です。

引き続き、配布に協力して下さる方を募集します。100部ずつお送りします(学生の方は無料)。送り先の住所、氏名、学校名or勤務先、学年を明記の上、こちらの連絡先までメール下さい。お待ちしております。

私立大学では既に発表会を終えているようですが、東工大では2月に入り卒業設計が本格化。g86も手伝っていました。後輩Yは曲線のプランを描いている。K笹は組織設計みたいなタワーで工学主義(?)。K井は都市空間における城郭の役割がテーマらしく、批判的地域主義(?)的。みんな楽しそう。盛り上がって欲しい。

春休みのオープンデスクも募集中。学部生、初心者歓迎。興味ある方はこちらへ。意欲ある皆さんの応募をお待ちしております。
fujimura

2008年02月13日

RAJ発送/K-PROJECT上棟/建築あそび交流

ちょっと遅くなってしまったのですが、この週末にROUND ABOUT JOURNAL vol.3を発送しました。京都のUさん、大阪のKさんなど、お届けした方から早速メールを頂いています。PDFでwebに公開するのもよいけれど、メールで募った希望者に直接送付するのはmixiの足跡機能にも似て、誰に届いたのか実感できるのがいいですね。というわけで学生の皆さん、届いたらまず連絡をよろしくね。

ROUND ABOUT JOURNALvol.3はINAX:GINZA、お茶の水の南洋堂、大阪の柳々堂にて配布して頂いていますが、配布に協力して下さる方(特に地方の方歓迎)には100部ずつ直接お送りします(学生の方は無料)。送り先の住所、氏名、学校名or勤務先、学年を明記の上、こちらまでメール下さい。お待ちしております。2月29日まで。

5日、13:30坂本一成先生インタビュー@東工大。坂本先生と初めてじっくりお話する。形式と便宜の緊張関係に建築の意味を見出したい、と主張される先生に、スケールやプロポーションの役割とは何か、執拗に問いかけてみた。とても贅沢な時間だった。

18:00ちょい遅刻で新建築社へ。南後由和、ドミニク・チェン、藤村龍至という組み合わせで鼎談。初めて3階のサロンに入る。よく雑誌で見る部屋である。やや緊張しつつも鼎談開始。先日のLIVE ROUND ABOUT JOURNALを振り返りつつ、そこで浮かび上がった諸問題について討議。ふたりとも切れ味鋭い問題提起の連続で盛り上がり、あっという間に20:30。こういう議論を定期的に続けていたら何かすごい文脈が生まれていくのではないか。

6日、K-PROJECT上棟式。現場係員のS井さんも今日はなんだかテンション高い。鳶の親方、お施主様に続いて四方を清める。簡単に挨拶をし、近隣挨拶。会食のセッティングはご挨拶も兼ねてお隣のお寿司屋にしてもらった。

現場ではカオティックな街並にものすごいボリュームが立ち現れつつある。しかもそれが4つのコアで軽快に浮かんでいるのが痛快!5月末の竣工まで気が抜けないが、ここまで来たら前進あるのみ。絶対にモノにしてやる、と気合いが入る。

19:00柄沢、南後と「批判的工学主義」の打ち上げ。継続的な議論から生まれつつある小さなコンセプトを、大きな流れに変えていくべく継続的に仕掛けていく。

7日、打ち合わせ@エクスナレッジ。こちらも定期的に打ち合わせを繰り返しながら、少しずつイメージを固めて来た。この日でおおよそ方向性が見えた。「これ上手くまとめたら歴史に残るでしょう!」と一同テンション上がる。

10,11日は佐藤敏宏さんを訪ねて福島へ。1/26のLIVE ROUND ABOUT JOURNALに偶然いらして下さり、私たちの活動に興味を持って頂いたとのことで、打ち上げを兼ねてみんなで押し掛けて議論の続きをすることにしたのだ。

1泊2日、正味24時間とちょっと。佐藤さんの建築の見学と、旅館での討議。とにかく濃密な時間を過ごした。疲れもすっかり吹き飛んでしまい、車中でも、食事中でも、延々議論し続けた結果、「建築主義者」というありがたいネーミングを頂く。それでも佐藤さんは「話したいことの1/4しか討議できなかった」という。

世代論的で、世代の連続よりは断絶を強調しているところとか、建築をモノというよりメディアとして捉えているところなど、「ROUND ABOUT JOURNAL」の一連の活動は、「建築あそび」に知らず知らずのうちに大きく影響されているのかも知れない、と再認識した。特にプラットフォーム的構造をもつイベント「LIVE ROUND ABOUT JOURNAL」が、佐藤さんの一連の活動の原点であるという「土湯温泉ワークショップ」(1984年)にそっくりなのに驚いた。

佐藤さんの建築は2002年に初めて建築あそびに参加させてもらったときにいくつか見せて頂いたが、改めて拝見すると当時は見えなかったものが見えてくる。形態のメッセージ性も、ディテールの荒々しさも、その建築に住まう人々の知性がこれらの建築を支えているという当たり前の事実も、当時は何も理解していなかったな、と思う。

伊庭野も松島も藤井も、佐藤さんの挑発に刺激され、自分の意見を表明するうちに自分の考えが鮮明になるという、貴重な体験をしたと思う。興奮気味に「楽しかったです」と話す彼らを見て、佐藤さんがあの日たまたま現れたという偶然に感謝しなければならない、と思った。
fujimura

2008年02月15日

RAJvol.3配布協力者引き続き募集(2/29まで)

ROUND ABOUT JOURNAL vol.3は岡山のJさん、群馬のOさんからも「届きました」旨メール。嬉しいですね。続いて福岡のMさん、札幌のNさんから配布協力の申し出を頂き、100部発送しました。広島のOさんという方からもメールを頂きました。すぐ発送しますので、少々お待ち下さい。届いたらご連絡をお願いしますね。

これで配布に協力して下さっている方は札幌、群馬、東京(2)、京都(2)、大阪(2)、岡山、広島、福岡、熊本と全国展開(^_^)/。東北、四国、沖縄あたりの人でご協力頂ける方がいたらぜひメール下さい。もちろん、上記と同じエリアの方でも大丈夫です。フリーペーパー本体は無料、送料のみご負担頂いています(1000-1200円程度)が、学生の方、学校等で配布される方には無料でお送りしています。送り先の住所、氏名、学校名or勤務先、学年を明記の上、こちらまでメール下さい。2月29日まで。

濃密な誌面ですので、きっと読み応えがあると思います。読んだ方、感想をメールして頂ければ、次の誌面づくりに必ずフィードバックします。よろしくお願いします!

だいぶ埋まってきましたが、藤村事務所のオープンデスクも引き続き募集中。学部生の皆さん、春休みにちょっとだけ時間を割いておくと、4月以降に圧倒的な差がつきますよ。時間を無駄にしたくない方はぜひ。

明日(16日)、宮城大学の講評会のため仙台に行きます。
fujimura

2008年02月20日

講評論

RAJの発送作業続く。静岡Oさん、新潟Sさん、仙台Mさん、京都Wさん、鹿児島Tさん。そろそろ在庫が少なくなって来た(あと400部くらい)ので、欲しい方はお早めに。

15日、塚本研の後輩Nの壮行会@自由が丘。2次会ではカラオケに突入。マイクを話さない留学生たち。4時頃解散しマックで始発待ち、的な。

16日、そのまま一睡もせず事務所へ。新建築社へ書評原稿を送ったあと、新幹線で仙台へ。宮城大学の卒業設計自主レビュー@せんだいメディアテーク。中田千彦さん、岩下暢男さん、本江正茂さんと一緒に12人の学生の作品を講評。

講評会に呼んで頂いた時は意図して分析的に話すようにしている。分析的な講評が一番フェアだと思うからだ。自分なりにメッセージを込めたつもりだが、どれだけの学生に伝わっただろうか。

面白かったのは、「宮城らしさ」をテーマにしている人が皆無だったこと。以前、新潟大学の学外講評会に参加した時は新潟のローカリティに関わる提案が多かったので、地方の大学とはそういう空気なのかと思い込んでいた。他の大学ではどうなのだろう。

もっとも宮城大学の場合、「日本一決定戦」が近くで開催されていて、運営スタッフをやっている学生も多いそうだから、卒業設計のトレンドを良くも悪くも学習してしまっているのかも知れない。その意味では「日本一」にあまり接続していない東工大の方がむしろローカルっぽい。

ところで卒業設計のトレンドとは、一言でいえば「個人の主観を根拠にした形式主義」。機能はもちろん、歴史も伝統もテーマにはせず、個人の感覚を形式化し、オーバードライブさせる。

そういう趣向に「社会性がない」と批判するのは容易だが(そして大半の大学ではそういう講評が行なわれているのだろうが)、ここで必要なのはむしろ「まだ個人の感覚の掘り下げが足りない」と問いかけることなのではないかと思う。現代の工学的状況においてはコンビニで立ち読みをし、自動車に乗り、ショッピングモールの売り場で家電を買って・・・という日常の身体感覚を建築的に掘り下げるほうがよっぽど社会性があるのだが、そういうアプローチの作品にはなかなかお目にかからない。おそらくそれを評価し、議論する枠組みが大学の講評会にはないのだろう。

結果、大学では地域性や公共性を持ち出して適当に繕い、学外では「つくりたいからつくりました」とトートロジカルに語る、という議論のショートが反復される。このままでいいのか。

17日、11:00住宅施主打ち合わせ@事務所。引き続き13:00台湾の雑誌『Dialogue』誌の取材打ち合わせ。『Dialogue』は文字通り「話し言葉」を重視した媒体で、RAJのコンセプトとも通じるものがある。LRAJ の記事は早速『新建築』『GA』『日経アーキ』に掲載して頂いたが、結果的にどこよりも早かったのがこの『Dialogue』だった。しかも次号では8ページの記事を組んでもらえることになった。

レイアウトも出来そうとのことなので、vol.4のようなジャック形式で、vol.7として対応してみたい。RAJの活動が日本の地方で知られていくように、中国語圏、英語圏でも広まっていくのは面白い。

17:00移動し、石上純也さんのKAIT工房の内覧会へ。工科大学的な無表情な裏庭に、ものすごいオーラを発していた。石上さんらしい、偏った個人的な身体感覚が徹底的に追及され、抽象化された形式主義的な建築。まさに卒業設計のトレンドとも重なる手法である。

構造の現れ方など、建築的な細部もあるのだが、その扱い方はやはり建築的というよりは美術的な思考を感じる。緩めなスケールと均質な照明計画、鉄骨平屋という構造、透明なファサードなどがあいまって、スーパーマーケットのような、とても郊外的な空間性を感じて、そこに親近感を感じたりもした。あと、経験としては意外とスタティック。極端な話、写真1枚で伝わってしまう。『新建築』なら4ページで紹介できてしまうような単純明快さがある。

そこで会った人と感想を話し合うがありきたりな感想しか出て来ない。これについて何か書くとその人の講評力がバレるような感覚を覚える。「中と外が曖昧」とか、「機能が曖昧」とか書いたら負け、そんな建築だ。

ともあれ、きっと様々な媒体に載って世界を駆け巡る記念碑的作品となるだろう。海外ではどういう評価がなされるのだろうか。

20:00渋谷に戻り、LRAJのメンバーで打ち上げ@事務所近くの飲み屋。久しぶりに全員揃った。振り返って余韻を噛み締めたり、今後の課題について話し合ったりするはずが、結局(いつもの)茶飲み話。日曜の夜は開いている店も少なく、ファミレスに移動して高校生のようにダベる。この放課後感、部活感が長続きさせる秘訣だろうか。でもなんとなく次号のテーマや攻め方は見えて来た。あとは仕掛けるタイミングの問題だ。
fujimura

2008年02月29日

どこに届き、いかに響いているのか

2月末日をもって、RAJの配布を完了しました。藤村事務所にストックされていた在庫もきれいさっぱりなくなりました。増刷はしませんので今後はお問い合わせ頂いてもお渡しできませんが、あしからずご了承を。

おかげさまで最終的に札幌から鹿児島まで、列島を横断するように配ることができました。ご協力頂いた皆様、どうもありがとうございました。感想をお送り頂ければ幸いです。

今回の「配布協力者募集」という新たな試みを通じて、私たちの発信する情報がどこに届き、いかに響いているのか、よく理解できた。基本的に東京近郊などの都市部からはほとんど問い合わせがなく、熱心だったのは地方在住の学生や若手建築家たち。都市部の学生はレクチャーやオープンデスク等で生の情報がほどほどに集まるから、オルタナティブ・メディアの動向などいちいち注意していないのかも知れない。それに対し、地方の学生や若手建築家たちはネット発の情報に敏感だ。議論の新しいイメージを提出したいと考えている僕たちからすれば、こうした情報のギャップをひっくり返し、意欲の高い読者と直接繋がることの方がはるかに効率的だといえる。

18日、18:00編集委員会@建築学会。担当の連載企画「建築マンガ」に対して五十嵐賞を頂く。

19日、『ヴィヴィッド・テクノロジー』の出版記念トークショーへ。これだけの構造家が一同に会しているという企画は新鮮。その後の懇親会では、あまりお話したことがなかった小西さんや満田さんともじっくり話せて楽しかった。

23日、卒業設計発表会@東工大。投票で淡々と賞が決まっていく。あれよあれよという間に金賞が確定。長く続いた祭りも、終わりは実にあっけない。一度順序が決まると、そういうものだったのかも知れないと思えてしまうが、評価は自分で作るもの。勝っておごらず負けて腐らず。たかが卒業設計ではないか。

同日、「トウキョウ・コレクション」の事前審査で早稲田大学へ。八束はじめさん、太田浩史さん、馬場正尊さん、青井哲人さんらと一緒に、修士論文の梗概の束を渡され、選考を行う。

普段見慣れているとはいえ、初見の論文の内容を見定めるのは楽ではない。レベルも様々で、精緻なものもあればいい加減なものもあり、絵日記か!と言いたくなるようなものも多い。

それでも不思議なもので、ざっと眺めているうちに自分なりの評価基準ができてくる。「A:位置づけと方向性があるもの」「B:分類しただけのもの」「C:手法レベルで論をなしていないもの」という具合に3段階評価をしてみると、おおよそ1/3ずつに分かれた。ここで選ばれた論文は、6日にヒルサイド・フォーラムで公開審査が行われる予定。

24日、都立現代美術館で川俣展。吹き抜けでカフェ・トークを聞く。社会の中における美術の役割、という話が出て、「現代美術で社会を変えられるとは思わない。トリートメントみたいに、使ったらつやがよくなったとか、そういうもの」という川俣さんの発言が興味深い。展示をじっくり見て、最後にビールを飲んでいると、オランダの美術館の雰囲気を思い出す。

28日、都市再生機構の武田重昭さんらによる勉強会「都市再考会議」で山崎さんとレクチャー。ふたりで何か話すというのは初めて。メディアのあり方について議論。

武田さんは造園の出身で、造園の人とだけ議論することに閉塞感を感じるという。僕は建築家と建築の話ばかりすることに閉塞感を感じたことはない。話題を絞ることはむしろ議論に軸をつくるので、むしろ開放感が感じられる。RAJではシュウ・ウエムラさんにインタビューを行い、建築や都市について議論したが、これは例えば青木淳さんに映画の話をしてもらうのとは似て非なる話だ。

3月1日、MUSEUM OF TRAVELのイベント出演。社会学者の田中大介さん、新雅史さん、建築家の吉村英孝さんと「コンビニ」をテーマに議論するという企画。南後君のコーディネートで、いつもは建築の議論に南後君を引っ張り込むかたちだったが、今回は少しアウェイな感じ。

初対面同士、かつお互いがどのような研究をしているのかもよくわからず話が噛み合うか心配していたが、さすがに議論慣れしている人たちだけあって白熱。田中さんは若林幹夫さんの、新さんは上野千鶴子さんのゼミの出身だけあって、田中さんはアジアや都市の枠組みでやや抽象的に、新さんは家族や資本の枠組みでやや具体的に展開。最後に質問コーナーがあり、たくさん質問を頂く。

「コンビニ=均質」というステレオタイプな理解に社会学的な分節を試みる田中さんも、「実家がコンビニを経営している」というバックグラウンドから実感を込めてコンビニの変容を示唆する新さんも、ともに迫力があり、刺激的だった。呼んでくれた南後君と、イベントを主催している井上さんらに感謝したい。

アイディア・コンペや卒業設計も大事だが、建築の将来を考えるなら、こういう議論にこそもっと人を集められるようにしないといけない。新しい議論のイメージをつくりたい。
fujimura

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