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身体の発見 卒業設計日本一決定戦2008

3月9日、昨年に引き続き、卒業設計日本一決定戦に行ってきた(取材です)。まずは、模型フロアを一気に見る。東は明大と工学院が、西は近畿大、京大の作品が目立ったように思う。前週の3大学公開講評会でグランプリだった芸大生の作品は100選にも選ばれていない。評価は生ものだ。京都6大展で気になっていた、ニューヨークを敷地とした近畿大の学生の作品が100選に残っていた。ぜひファイナルでプレゼンを聞いてみたい(が結局12位で落選。残念)。途中、明大田路研の斉藤さんらに出会う。g86からも声をかけられる。

結果は関西勢の圧勝。一位は6大展でも最優秀だった「神楽岡保育園」。激ウマのデッサンと、作り込まれた模型。よどみないプレゼン。今年は一位の選出に時間がかかったが、それでも対抗馬が見あたらない完成度だったと言える。日本三も京大。学内ではまったく評価されなかったらしいが、仙台では三位。注目は二位の作品。大阪大学の女子学生だ。内容は、作者の自邸。プレゼンは、親しい人に宛てた手紙を読むという異例の形式。しかし伊東さんも「ぼーっと聞いてしまった」と言うほどに聴衆を魅了する内容。五十嵐さんは「500の作品を見て、この作者にだけは会いたいと思った」とラブコール。質疑応答では「私は自分に正直なことしかしたくなかった」と繰り返し主張する彼女に、私性と社会性という、ここのところ問題化されがちな構図がぴたりと当てはまり、激論に発展。伊東さんとこの学生が応酬するすさまじいマイクパフォーマンス。

個人的には、特別賞に選ばれた東北芸工大の学生の作品が心に残る。ある敷地において、過去そこにあった身体の所作(具体的には農家のおばあちゃんの動き)を読み込んで土地にトレースし、場所の記憶を建築化するという案。私と社会の両方をまたぐ身体の問題に真っ正面から取り組んだ作品に、感激した。

社会性について、伊東さんがある作品にこんな批判を寄せていた。曰く、その作品は一見社会性を持っているように見せて、実はまったく社会に開かれていない、と。ぼくは、そもそもなぜ10選に選ばれたのかよくわからなかった。そこに、設計した学生たちの身体が見えなかったからだ。説明を聞けば聞くほど、問題意識の「本気度」が疑わしく見える。案にどう取り組み、何をつかんだのかいっこうに伝わってこない。要するに、主体が見えない。主体性のない議論は机上の空論だ。

ふと、さいきん話題になりがちな社会性と私性の乖離について考えた。審査の過程でも、たとえば貝島さんは再三に渡り、社会を忘れたアプローチが卒計を跋扈する状況(さらに、今年の結果が来年に与える影響)を危惧していた。まったく正論だ。でも、社会性と私性は、本当にそんな簡単に対置されるものなんだろうか。日本二の案は、「私」の問題だけを扱っていたようには思えなかった。「私だけが扱える問題」ではあったが、「私の問題」ではなかった。「私から始める問題」ではあったが、その問いかけは共有可能だったと思う。うまく説明できないけど。

逆に言えば、たとえば石上さんや大西+百田さんの案が支持を得るのは純粋な私性ゆえだろうか? 答えはおそらくNOだ。彼、彼女たちの建築を下支えているのは、無垢な私性でも強引な作家性でもなく、身体を介在させた強靱な主体性なのではないか。しばらく考えてみたい。

それにしても、今年は審査員の布陣がすばらしかった。特に新谷さんのコメントと判断の明晰さは印象深い(ダンディーだし)。だからこそ、東大からの出品、それも3大学公開講評会で個人賞をとった作品が軒並み出展していなかったのは残念だった。内藤賞を獲得した案など、仙台で見てみたかった。各地でさまざまな卒計イベントが乱立し、結果的に各大学のカラー・持ち味がようやくはっきりしてきた感がある。だからこそ東大生には、3大公開講評会で得られる「学外の評価」をバネに、日本一決定戦に乗り込んでほしいと思った。事実、第一回第二回は東大が勝っている。一観客として、関西・地方勢、女子勢が熟してきた今こそ、ハードコアな頂上対決を見てみたいと思う。

さて、今年の結果が来年の卒業設計に与える影響は大きいだろう。しかし、今年やられ評価されたことを、来年同じようにやっても仕方がない。どんな作品を見ることができるのだろう?
yamasaki



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2008年03月10日 23:21に投稿されたエントリーのページです。

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