« 2008年06月 | メイン | 2008年08月 »

2008年07月 アーカイブ

2008年07月02日

事務所をBUILDING K内へ移転します

事務所をBUILDING K内へ移転することにした。最上階の一室である。今の渋谷にある事務所は立地もよく、坂を上って行くアプローチや周辺の感じが気に入っていたので特に不満はなかったのだが、最近は手狭になってきたことと、自分たちで設計した建築に入居できるチャンスは少ないと考えたことと、何よりも勉強になると考えた。「風景の解像力」展で模型が出ている隙を見計らって残りを移動するという作戦。

2日、引っ越し1日目。本箱と模型から順番に移動。19:00、この場所で夕食を取るのも最後となる。2005年10月以来、2年9ヶ月。モノがなくなって声がよく響く。事務所開設当時を思い出す。

「UTSUWA」も「BUILDING K」も、「批判的工学主義」も「超線形設計プロセス論」も、フリーペーパーもTable of Youthも、全部渋谷のこの部屋から生まれたものだ。たくさんの学生たちに来てもらった。今となっては連絡の取れない人たちばかりではあるが、感謝しています。

新しい事務所から、さらに多くの建築と、コンセプトと、情報を発信して行きたい。

7/3(木)より連絡先が変更となります。高円寺駅から近い(徒歩3分)ので、お近くにいらした際はぜひお立ち寄り下さい。本日一杯は引っ越し、土曜日はシンポジウムと会場の撤収などでバタバタしていますので、落ち着くのは週明けになりそうですが・・・。

FORM_Story of designにて展示をレビューしてくださいました。私たちの展示やBUILDING Kについてコメントを頂いています。

今回初めて藤村さんの模型をみて正直おどろいた。建築が微に細に入り人間の思考とそして手の動きのなかでこのように具現化されるものなのか、整然とならべられた建築模型から、建築家本人の人格までもがあわわせれていて、まるで優れた私小説を読むような充実した印象をもった。
http://form-design.jugem.jp

五十嵐太郎さんも展示を見て下さったようです。近代美術館における青木淳の「迷宮的」プロセスの展示と私たちの構築的な手続きの展示が比較されています。
http://www.cybermetric.org/50/

そのほか、ブロガー諸兄のリポートも続々UPされています。

g86山道拓人
http://d.hatena.ne.jp/sandotakuto

sawada
http://croquisxcroquis.blog21.fc2.com

taniyaan
http://taniyaan.blog.drecom.jp

最後に、展示を手伝ってくれたDESGIN HUB中島弘陽のブログで、準備風景がレポートされています。
http://blog.livedoor.jp/koyonet

5日までで終わってしまうのがもったいない感じもしますが、シンポジウムで盛り上がってしっかり終わりたいですね。

fujimura

2008年07月04日

建築を使う

昨日から、自分たちで設計した建築を自分たちで使っています。すごく不思議な感覚です。仮に使っているだけなのではないか、数日したら渋谷のあの部屋に戻るのではないか、という錯覚にときどき襲われつつも、快適に過ごしています。

使ってみるといろいろ気がつくことがあります。今のところ使い勝手は悪くないし、寸法もいい感じ。昼の感じも、夜の感じも、なかなか気に入っています。建築を使うことが、こんなに楽しく、気持ちのよいものだとは。

「批判的工学主義」について、コメントが続けて出ています。

10+1ウェブサイト
議論が拓く世界──「LIVE ROUND ABOUT JOURNAL」評釈(前篇)|倉方俊輔
http://tenplusone.inax.co.jp

建築史の倉方俊輔さんが、LIVE ROUND ABOUT JOURNALのレビューと、それをもとに議論を展開して下さっています。

LRAJの発表を聞く限り、誤解の種になりそうなポイントは大きく2つある。
ひとつは、既往の建築論との違いに重きを置くあまり、単なる「工学主義」と混同されてしまいそうな点。(中略)もうひとつは、どこまでが「批判的工学主義」の理念で、どこからがそれを達成する手法であるかが、混同されやすい点である。

厳しいなあ(^_^;)。でも、まさにその通りです。

ここでいう「新たなる場所性」とは何か? 「批判的工学主義」を《手段》としたときの《目的》とは何か? 衒いを捨てて、次に論じなければならないようだ。

そうそう、そうなんですよ(-_-)/!!。

明日のINAX:GINZAで、できれば論じたいです。そこんとこ、よろしくお願いします>倉方様

もうひとつは千葉大学の岡部明子先生。

建築雑誌オールレビュー
『建築雑誌』6月号

古き良き都市を標榜する反動的な都市論が目を背けてきたマーケットの必然的産物であるコンビニやタワーマンションや郊外地区。建築家としてこれらと正対しようとする姿勢は頼もしい。

ありがとうございます。

ただ、工学主義を利用する「戦略」とは具体的に何なのか。「メディア論と建築の共同作業」(長谷川一、メディア論)、「計画学と行政の連携」(岩佐明彦、建築計画)が手がかりとして出てはくるが、いかにも動きが遅く弱い。商業主義がマーケティングに圧倒的な投資をして築いているデータベースの牙城を我がものにしている限り、「批判的工学主義」に実効性のある戦略を期待しうるのだろうか。

倉方さんの問いとも通じる問いかけですね。今後の運動の展開や、設計の実践で徐々に示して行きたいと考えています。

30日、18:00編集委員会@建築学会。先日ネットで藤村批判を繰り広げていた学生は五十嵐研の院生ということが判明。

1日、10:00BUILDING Kの掲載打ち合わせ@新建築社。ページ構成を考え、写真を選ぶ。13:00『建築雑誌』に連載中の「建築マンガ」のため漫画家さんと打ち合わせ@外苑前。15:00インタビュー@TNA。武井さんは塚本研出身なのでお話する機会は多いが、じっくりコンセプトやルーツについて伺うのは初めて。とても面白い。

事務所に立ち寄る間もなく地下鉄で移動し、伊東豊雄×セシル・バルモンドの講演会へ。打ち合わせ続きでぼーっとしていたら話しかけられること数回。卒業設計講評会で出会った人が東京に出て来たり、社会人になったり。頼もしい。

セシルの英語は聞きやすく、論理構成がかなり図式的でわかりやすい。

曰く、
1.中心があり、対称的な幾何学
2.中心がずらされ、歪曲された幾何学
3.アルゴリズムで構成されたダイナミックな幾何学

モダニズムは1、デコンは2、自身の展開は3。

アルゴリズムで出来た空間の意味は「ラブリー」以上には語られないのだが、それでサマになるのだから文句は言うまい。建築の新しい展開として、とても面白い。

伊東さんのレクチャーでは「諏訪湖博物館・赤彦記念館」(1993)が1として反省的に語られ、「サーペンタイン・ギャラリー」(2002)が3として位置づけられている。「多摩美術大学図書館」(2007)は2だし、UCBのギャラリーなども2であろう。伊東建築は2と3のあいだで試行錯誤を繰り返していることがよくわかる。

会場(1800人収容)は満員御礼。学生も多いが、スーツを着た社会人も多い。そのことが多少不思議にも思える。セシルの思想はヨーロッパのサロンでは熱狂的に迎えられているとしても、現代の日本社会ではすぐに応用可能であるとは言い難いからだ。

僕らはどうやってレファランスすればいいんだろう。レクチャーで盛り上がって、翌朝オフィスにつく頃には忘れるのか、その日から実務に応用するのか。思想と実務が連続する社会ならもっと面白くなるはずだ。ではどうすればいいのか。それは「批判的工学主義」のミッションのひとつでもある。

3日、11:00打ち合わせ@エクスナレッジ。先が見えて盛り上がって来た。14:00ゼミ@東工大。20:00永山祐子さんインタビュー。23:00事務所に戻る。

最後に、告知を。アキレスの皆さんと、神戸芸工大の皆さんのご協力を得て、10日に以下のイベントを行います。神戸近辺の方はぜひいらしてください。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ラウンド・アバウト・ジャーナルVol.8公開収録
「若手建築家のアジェンダ」

1995年以降、経済のグローバル化と、情報技術の環境化によって建築設計を取り巻く環境は厳しさを増している。1970年代に始まったアトリエ系建築家と組織・ゼネコン系建築家の乖離や、2000年代以降のあいつぐ建築専門誌の休刊によって議論の場が消滅したことによるメディア環境の断絶は、解決の糸口も見えないまま私たちの前に立ちはだかっている。
2002年より活動を開始したROUND ABOUT JOURNALはブログ、フリーペーパー、イベントの開催などを通じてアトリエ系と組織・ゼネコン系、東京と地方などをブリッジする議論の場を設計しようとしている。今回は、関西地区の若手建築家に公開インタビューを行うことで、彼らが何を考え、実践しようとしているのか、それぞれのアジェンダを共有する場としたい。

■日時:2008年7月10日(木)18:30-21:00

■場所:神戸芸術工科大学 セレンディップギャラリー・カフェ(D棟)

■アクセス:http://www.kobe-du.ac.jp/access/index.htm

■参加建築家(敬称略)

柳原照弘(isolation unit)、市井洋右(市井洋右建築研究所)、今井敬子、山崎亮(studio-L)、香川貴範(SPACESPACE)、家成俊勝 大東翼 赤代武志(dot architects)、笹岡周平(WASABI)、藤村龍至 山崎泰寛(TEAM ROUND ABOUT)

■タイムテーブル

18:30-18:50 挨拶・問題提起(藤村)
18:50-21:00 ディスカッション

■主催:TEAM ROUND ABOUT、アキレス

■お問い合わせ
dot architects
tel : 06-7171-1977
mail : dotarchitects@tcct.zaq.ne.jp

■協力:神戸芸術工科大学 環境・建築デザイン学科
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

明日は頑張ります。

fujimura

2008年07月06日

「風景の解像力」展を終えて

昨日で「風景の解像力」展終了。シンポジウムも盛況でイベントとしては大成功。新建築社とINAXのコラボレーションというかたちが作れたのはよかった。このような場を作って下さった両社の皆さんには感謝したい。

今回の雑誌、展示、シンポジウムは、多角的に各建築家のアイディアを知らせるいい機会になっただろうし、自分にとっても世代の近い建築家の皆さんと並んで雑誌や展覧会でプロジェクトを発表する初めて機会だったのでとても勉強になった。

順番に振り返ってみよう。

まず雑誌で思ったのは、自分たちのページが全体の中でかなり浮いてしまったということ。最初に編集長の橋本さんから頂いたお題は「作品紹介ではなく、ステートメントを述べるように」と言うものだったのであえてテキストに6ページを割き、かなりはっきり理論的な文章を書かせてもらったのだが、ビジュアル・インパクトという意味では少し弱かったかも知れない。もっとも、しっかり文章を書いておくとあとでじわりじわりとリアクションが増えてくるので、長期的にみてどちらがいいのかわからないが。

次に展示で思ったのは、特に僕たちの場合は模型がメインだったので、本より意図がはっきり出たということ。今回も方法論に特化した展示を試みたが、隣の藤本さんや石上さんの展示をみて、何事もつかみが大事だという気もした。もっとも、デビュー戦では全力でやるしかないのだが。

最後にシンポジウムで思ったのは、改めて思いを伝えることは難しいということ。自分のキャラクターは出せたし、話したいことを話せたのでその意味では後悔はないが、あとで長谷川さんに「自分は他の人たちがやろうとしないことをやっている、とはっきり言えばよかったのに」と言われ、なるほどと思った。

終了後、南後さんに「今までの発表のなかで一番よかった」と言われ、写真家の川村さんやNUNOの安藤さんに「今までは隙がないという印象があったが、今日の話を聞いて好感が持てた」と言ってもらえたものの、藤本さんには「昔、ギャラリー間で篠原、長谷川、隈、藤本で出たときの篠原さんみたいだった」と言われる。要するに浮いていたということでは。

いつもそうだが、イベントで何かを大量に発信した後は、エネルギーを大量に放出するのでぐったりと疲れる。昨年のプリズミック・ギャラリーのときはオープン後しばらく何も手につかなかったほど。最近は立ち直りが早くなって来たので以前より馴れて来たとも言えるが、意図が通じなかったり、思うような評価が得られないことで、若干のフラストレーションも溜まる。

でもまあ、それがよいのだ。今回できなかったことを改善して、次に活かせればよい。またみんなで集まって、表現して、議論できれば楽しいではないか。
fujimura

2008年07月09日

夜風に吹かれながら

久しぶりに関西に来ています。

10日は神戸芸工大カフェテリアで「ラウンド・アバウト・ジャーナルVol.8公開収録『若手建築家のアジェンダ』」を行いました。短い告知期間にも関わらず80名くらい集まり待って下さいました。

早速をレポートを、と思いましたが既に詳細なレポートがUPされています。ありがとうございます。

portrait in something
http://shinkiti.exblog.jp

ブログまでブログ
http://d.hatena.ne.jp/sakakibara1984

詳細は後日振り返りたいと思いますが、皆さんバラバラで議論が成立しないかも知れない、と心配されていたのに、強い議論の軸が取り出せました。

終了後、皆で地下鉄で三宮に移動し、軽く打ち上げ。終電で帰宅。最後の電車まで、ずっと議論が止まらない。何なんですかその熱さは。

11日は朝イチで京都四条の満田衛資さん、その後広島に移動し谷尻誠さんを訪問。詳細は後日。

夜はFUTURE STUDIOの小川文象君、宮森事務所の石川誠君も合流し、飲み。こちらもとても熱い。

future studio weblog
http://fstudio.exblog.jp

12日は朝イチで京都に戻り静原の森田一弥さんを訪問。その後豊中のdot architectsへ。こちらも詳細は後日。

インタビュー終了後、神崎川駅近くの沖縄料理屋に10日のメンバーが再集結。議論の続き。

店が閉まり、神崎川の川辺に移動し、車座になって議論。10日に議論し足りなかったので、studio-Lの山崎亮さんに絡んでみる。

いい大人が集団で座り込んで河原で議論をしている絵が可笑しい。時折通り抜ける夜風が気持ちよい。議論を続けながら、この気持ちよさと楽しさは一生忘れないだろう、と思った。

「風景の解像力」展に続いて、いい刺激になった。お世話になった皆さん、どうもありがとうございました。
fujimura

2008年07月13日

ROUND ABOUT JOURNAL vol.8 公開収録「若手建築家のアジェンダ」

8日、20:30松川昌平さんインタビュー@BUILDING K。松川さんとは2002年くらいからおつきあいさせて頂いているが、じっくり話を伺うと見えてくるものもある。特にデザイナーとは何か、建築とは何かについて考えさせられる。

10日、午後イチの新幹線で16:00過ぎ神戸入り。三宮でdot家成俊勝さん、大東翼さんと待ち合わせ。喫茶店でちょっとした打ち合わせ後、学園都市の神戸芸術工科大学へ。小学生4年生のとき地下鉄が名谷から学園都市まで延伸されて父と乗りに来たことがあるので、かれこれ20年ぶりということになる。ザ・郊外的な風景が広がる。

今回の公開収録イベントは、僕が別件の企画で関西方面を訪れる機会があり、それに合わせて家成さん、今井敬子さんらが動いて下さり実現したもの。

18:30、人も程よく集まりイベントスタート。トップバッターはデザイナーの柳原照弘君。女の子の入ったスタイリッシュな写真でコンセプチュアルな作品を説明。プレゼンのスタイルは東京で言うと中村竜治さんのものに近いが、中村さんをもっと社会化したような感じである。クールに自己分析しながら話すスタイルにとても共感した。

続いて市井洋右君。郊外の住宅地に立つ住宅を2つほどプレゼ。「単純な形態で複雑な空間を作りたい」と主張。

3番目はSPACE SPACEの香川貴範さん。住宅、ホヅプロ、熊本駅前広場コンペ案を例に「package」「ヒューマンスケープ」といったキーワードを提示しながら、デザインにおける「『』を設計する」というデザイン行為における問いの立て方そのものを問う。「ぐちゃぐちゃしたものを捉えられないか」と問題提起。

4番目はWASABIの笹岡周平君。インテリアの領域でキャリアを積んだだけあってエモーショナルな空間作りがうまい。結婚式場、福祉施設、住宅と手がける領域も広い。

5番目は今井敬子さん。アトリエ系と組織系両方の勤務経験から、「反工学主義」と「工学主義」の境界は「2000平米がクリティカルになる」と興味深い主張。BUILDING Kがちょうどその規模である。2000平米を超えると設計が自動化していくという。まさに工学主義である。「ある一定規模をどう超えるか。」と鋭く問題提起。

6番目はdot architects。家成さんとは昨年apple storeで講演を2度一緒にやらせてもらった。彼らの考え方は十分に知っているつもりだが、今回もどんどん思考が発展し、仮説が確信に満ちていて正直驚いた。来春竣工予定という「住宅00」はドミニク・チェン君が「設計の道具としては最もコンピュータから遠いが、思考としては最も近い」と述べていたプロジェクト。「脱中心化」「動的編成」をキーワードに掲げる。

最後はランドスケープ・デザイナーの山崎亮さん。いきなり「『批判的工学主義』が何のために『批判的』なのか、金儲けがしたいだけじゃないのか。本当にそのデザインを続けていくことが人を幸せにできるのか。」と挑発的に問い詰める山崎氏。背筋が伸びる。

まずローレンス・ハルプリンの『ニューヨーク・ニューヨーク』を引きながらデザイナーズ・デザインを批判。自身のプロジェクトを簡単に紹介しつつ「人口減少時代にデザインをどう位置づけるか」「市民の主体性をどう引き出すか」「いま建築に何が可能か」「『社会建築家』は可能か」とたたみかける。大きな声と流暢な運び、理論と実践を踏まえた完璧なプレゼに圧倒される。「風景の解像力」展のシンポジウムにこんな人がいたらみんな黙ってしまったであろう。

発表の順番を考えているとき、なんとなく柳原君スタート、山崎さん終わりにするといいのでは、と思ったがこれが大当たり。紋切り型の「デザイナーズ・デザイン」に懐疑的な山崎さんと、紋切り型の「公共」に懐疑的な柳原君の対立軸が実にきれいに浮かび上がった。もうモデレーター要らないくらい。

一旦ブレイクし、個別に質問を。柳原君:「場所性をどう捉えるか」、市井君:「周辺環境をどう捉えるか」、香川さん:「全体性をどう捉えるか」、笹岡さん:「デザイナーの主体性をどう確保するか」、今井さん:「『ある規模』を超えたときの建築的思考の可能性とは何か」、dot:「『脱中心化』していったときの効率をどう確保するか」、山崎亮さん:「デザインの力をどう位置づけるか」。

以降の詳細は長くなるので別の機会に譲るが、個人的には柳原君の「ものをどう楽しんでつくれるか?を伝えたい」「ものをつくらないことも伝えたい」という問いかけが山崎亮さんの問いかけにぴったり重なったのが興味深かった。両者とも「デザイナーとは何か」ということを最も問題にしている。僕が「批判的工学主義」の議論で伝えたいこともそこだ。もっと議論を尽くしたかったがそこでタイムアップ。

最後に神戸芸工大の長濱伸貴先生にコメントを頂いてシンポジウム終了。時間はもっと欲しかったが、濃密な時間を過ごした後の充実感が残った。他方で山崎亮さんの冒頭の挑発に応えきれず、多少の悔しさもあったが、それは12日の深夜、神崎川の河原で開かれた会議にて再び議題とすることでいくらか解消することができた。が、まだまだ議論して問題意識を共有していきたい。他にも香川さんやdotの皆さんが提示していたデザインの問題など、話したりないことも多い。

今回の議論は河原での延長戦も含めて可能な限り録音してあるので、次号のフリーペーパーにて濃密な記事となって皆さんの元にお届けできるはずだ。次世代を切り開く刺激的な議論の萌芽と、それを生み出す熱い建築家達の動きがここにある、ということを確信した。

改めて、今回の議論でお世話になった皆さんに感謝したい。またそのうち続きをやれればと思う。
fujimura

2008年07月20日

再び京都へ

15日、13:00山崎亮さん来社。つい先日会ったばかりなのにもうこのタイミングで訪ねて来て下さるこのフットワーク。事務所を見て頂き、軽くBUILDING Kの内部をご案内。先日の議論でご一緒して以来、根本的な問題意識が共通していると感じる。博士課程に在籍しているところなど共通点もある。いくらでも話ができそうな感じがする。

16:00INAX:GINZA。虫鹿さん、小熊さん、辻館長にご挨拶。「風景の解像力」展がうまく行ったので、またやりましょう、と言って下さる。ありがたい。

帰りに石上純也の個展「小さな本のための小さな展覧会」を見る。「風景の解像力」展でも予告されていた通り、ベニス・ビエンナーレに併せて編集されているという『plants & architecture』のページを展示。シンポジウムでは「植物は周辺環境の象徴」と話していたが、都市的なスケールに自作を位置づける試みは少し意外。展示空間は90年代にセゾン美術館で開かれた「迷宮都市」展の妹島和世さんのコーナーを思い出す。

17:00大野博史さんインタビュー@オーノJAPAN。建築家とのコラボレーションの話になって、我々はいつもパラメーターを整理して諸条件を調整していくが、そのようなパラメトリック・スタディはどちらかというと構造家の思考だということを指摘されて驚いた。BUILDING Kはパラメーターのはっきりした建物だが、それはスタディの仕方がはっきり影響している。他の建築家はスケールとかプロポーションとか空間のイメージを提示するのだと言う。なるほど、そうかも知れない。

大いに納得し、「だから話が合うんですね!?」と実感を込めて同意を求めると「いや、構造としてはやりにくいです」と距離を取られる。

20:00中村竜治さんインタビュー@中村事務所。卒業設計の講評会とか、シンポジウムとかではご一緒することはあるが、この日は改めてじっくり話を伺うことができた。「かたち」の意味するところ、特に形式について、「美しいもの、繊細なものには人は何か感じるはずだ」という信念。「short cut」のある流山のコンテクストをどうか考えるか、みたいな少し意外な話もできた。

17日、10:30打ち合わせ@山本理顕設計工場。万国橋に移転してからは初訪問である。西田司さんとともにあるプロジェクトに携わることになった。山本さんに「西田さんと僕は同じ1976年生まれです」と言ったら「だからふたりを呼んだんだよ」と言われる。そういうコンセプトだったらしい。

以前から、高齢化と地域社会など、ミクロレベルで社会を論じる山本さんと中国でグローバルキャピタリズムに則ってマクロレベルで設計を実践している山本さんの関係に興味があった。話していると、前者の側面を西田さんが、後者の側面を僕がそれぞれ分担しているような気もしてくる。どちらも社会的なリアリティの問題であるが、建築家同士で十分な議論が尽くされているとは言い難い。

西田さんの事務所を拝見し、近所で昼食を挟みつつ軽くブレスト。途中Y-GSAの前を通ったが、心地よい距離感でいろいろな事務所や学校が集まっている馬車道駅周辺の環境はなんとなくロッテルダムのそれを思い出させる。OMAやベルラーへやMVRDVが至近距離にあり、互いに行き来しているあの感じである。

その後品川に移動して麹町の定例をこなして事務所に戻ると、程なくして大野さん来社。BUILDING Kをご案内。いろいろお話ししているとすぐに時間となり、移動。

20:00倉方俊輔さんインタビュー@王子。作家論に取り組んだきっかけと意義、歴史と批評の境界、実証と創作の境界、世代に対する認識などじっくり伺うことができた。熱い文章のタッチとは裏腹に、とてもクールに物事を見ている感じが意外。倉方さんのスタンスについて、理解を深めることができた。

19日、講評会のゲスト・クリティークに呼んで頂き、京都精華大へ。朝早くの新幹線に飛び乗り、地下鉄とタクシーで駆けつける。道中で商店建築のエッセイのオチと新建築8月号のキャプションを考えながら、宿題になっている乾久美子さんのテキストを読む。あれこれ考えを巡らせているうちにキャンパスに到着する。11:00新井先生ほかとご挨拶。学生の作品を眺め、投票し、学生とランチに出て、13:00講評開始。

新井清一さんのスタジオは「パラレル・アクティビティ」をテーマにしており、建築的思考を外部の領域へ拡張。パフォーマンス的な作品もあり、少々面食らうが、服部滋樹さんのスタジオのように比較的オーソドックスな建築的スタディをしているスタジオもあり、次第にコメントしやすくなっていった。鈴木隆之さんのスタジオはネットワーク・アーキテクチャーが主題。環境から情報を抽出する試み。

先週の神戸芸工大でのシンポジウムもそうだったが、一見バラバラな議論をしている、その多様性自体は価値のあることだ。しかし、それらを何らかのかたちで位置づけ、議論を束ねていくと、その場に思いがけないパワーが出てくることがある。少々力不足ではあったが、議論の場に呼んで頂いたからには、そのようなパワーを引き出すようなコメントを心がけたい。声を掛けてくれた学生の皆さん、お世話になった先生方に感謝します。

終了後、四条に事務所を構えるGENETOの山中コ〜ジ君と会い、近況を聞く。出町柳の三角州で京都精華大の学生、鈴木先生と打ち上げ。最終の新幹線で帰京。
fujimura

2008年07月24日

0宅論の時代に

20日、13:00西沢立衛さん、MDR荻原さん、斉藤さんと待ち合わせ、乾事務所へ。ある書籍企画のため、乾さんのレクチャーを聴く。西沢さんのコメントに対して、自分の意見を述べる。緊張したが、とても楽しかった。

21日、工藤和美さんにお声掛け頂き、川越市内で開かれた「まちかど講評会」へ。閉鎖した映画館の建物を利用して課題の講評を行う。東洋大学では川越を舞台に課題に取り組んでいるそうだが、僕が川越高校の出身ということで声を掛けて下さった。山崎別邸という大正時代の邸宅を残し、庭に地域の交流施設を計画するという課題。学生の課題に対し、コメント+ショート・レクチャーを行う。

映画館といい、山崎別邸といい、こういう歴史的な資源が豊富な川越は、全てタワーマンションに置き換わってしまった所沢に比べればまだ場所の濃密さが残っていると言える。が、観光地化された旧市街と、マンションが建ち並ぶ駅前の間の対立は以前に比べても深まっているという印象も残る。今や日本全国どこにでも見られる現象だが、我々は設計で答えを出すしかない。

22日、環境エンジニアリングの鈴木悠子さんインタビュー@BUILDING K。塚本研究室の出身で、今は設備設計の分野でキャリアを重ねており、BUILDING Kで初めて本格的に共働した。「設備家」と呼ばれるような、社会に向けて発言することのできる設備エンジニアのロールモデルが作れれば面白い。

23日、桑沢デザイン研究所へ。渡邉健介さんにお誘い頂き、前期課題のクリティークに参加。学生8名に対し、渡辺真理さん、木下庸子さん、大松俊紀さんら総勢7名の講師陣。高密度居住という課題。桑沢と聞くとインテリアのイメージが強いが、都市系の課題にも学生たちは意欲的な取り組みを見せる。

1999年夏、コロンビア大学でのサマースクールに参加した際に、ゲストクリティークに来ていたのが渡邉さんだった。あのとき、トレーシングペーパーで100枚以上のセクションを切る、など腕力で疑似的にコンピューター的思考を導入するスタイルに衝撃を受けた。日本ではスイス建築的なスタティックなボックスを寡黙につくっていくのが主流であったが、コロンビアでは3次曲面と形態生成のためのストーリーテーリングに熱狂していて、そのギャップはなんだろうと考えたことを不意に思い出した。

『新建築』原稿校了。BUILDING Kが8月号に掲載される予定。紙幅に限りがあるが、濃密な誌面ができたような気がする。

BUILDING Kと言えば、FORM_story of designにて詳細に論じて下さっています。
主観的BUILDING K 前編
主観的BUILDING K 後編

同潤会アパートとの比較は面白いですね。ありがとうございます。

時系列的には少し戻りますが、「風景の解像力」展シンポジウムについて、松島潤平のレポートがUPされています。

また、森田一弥さんが、ブログにて先日インタビューのことに触れて下さっています。

森田さんにはいつかお話を伺ってみたいと思っていましたが、お話ししてみると社会との距離とか、自らの職能をかなり正確に位置づけていらっしゃって驚きました。静原の美しい風景を眺めながら、全然フィールドが違うけれど、きっかけが違えば僕もここにいたかも知れない、と思えるような、不思議な交換可能性を感じる。

その前日の満田衛資さんへのインタビューは、ブログで書かれていたことも含め、誤解を解く機会になったのではないかと思う。個人的には構造家としての満田さんにも興味があるが、京都の歴史に位置づけられた建築家としての満田さんのスタンスにも興味があり、今回は主に後者のお話を伺った。設計プロセス論についてや、理論と実践の関係など、もっと突っ込んだ話も伺いたかったのですが、今後も継続的に議論させて頂ければと思う。

場所との関わりで言えば、谷尻誠さんは広島をベースにされているから、もっと広島の話題になるかなと思いきや、あまりそういう話にはならなかった。むしろエリアを限定せずに活躍されているので、広島のことを殊更に意識することもないそうだ。とにかく伝えていきたい、と前向きに話す谷尻さんには大きく刺激を受けた。

24日、田中浩也さんへインタビュー。tEntの事務所を初めて訪れた。様々な工作機械とコンピュータ機器が並ぶ工房。久しぶりにゆっくりディスカッションできた。

26日、10:00小野田泰明さんをBUILDING Kご案内。もっといろいろなことをお話ししたいと思った。12:30、少し遅れて山本事務所へ。山本理顕さん、西田司さんと打ち合わせ。

その後、日本橋に移動し、ラウンドリーディング・プラスに出演。五十嵐太郎さん、槻橋修さん、南泰裕さん、平田晃久さん、吉村靖孝さんと公開読書会を行い、ディスカッションするという企画。

僕の課題は隈研吾さんの『10宅論』。五十嵐さんにこの本を割り当てられたとき、なぜだろうと思ったが、松島JPに「確かに似てますね」と言われる。建築家を社会のなかに位置づけようとする姿勢は共通しているかもしれない。

つかもと師がかつて、住宅を日本の伝統と結びつけた篠原一男を「1宅論」、商品化住宅との対比を指摘した坂本一成を「2宅論」であるとし、その先に「10宅論」を位置づけ、さらに住宅のスタイルが部分化した現代は「1000宅(選択)論」が必要であると主張したが、ここでは現代はスタイルの多様性を生み出す構造そのもの注目するべきであり、住宅というカテゴリーでの議論を一旦キャンセルする「0宅論」を採るべき、と主張してみる。

我ながらキャッチーなのでは、と悦に浸っていたところ、隣に座っていた平田晃久さんに「『0宅論』は『オタク論』とも読める」と突っ込まれる。

会場で五十嵐さんに藤村批判を繰り広げているI君を紹介され、話す。大学院生らしく、いろいろ興味や関心が振れているようだ。批判でも賞賛でもいいが、それがある一貫性に基づいているものでなければ単なる言葉遊びとなる。今後も精力的に評論を量産して欲しい。
fujimura

About 2008年07月

2008年07月にブログ「roundabout journal」に投稿されたすべてのエントリーです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

前のアーカイブは2008年06月です。

次のアーカイブは2008年08月です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。