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5〜6月に見たものなど

さて、しばらく経ってしまったが、6月14日をもって東京を引き払い、(転勤で)京都に戻った。家族としては長く、仕事としては短い1年3カ月。個人としても、round about journalのフリーペーパーやイベント、箱展で仕事をさせていただいたこと、アーキフォーラムで魅力的なゲストにお越しいただいたことなどなど、この期間は短いながらも非常に濃密な時間だった。できなかったこともまたたくさんあります。京都で生活を仕切り直して、また楽しく建築とつきあっていきたい。

前回の更新以後見たもののメモ。5〜6月の出来事は、ずいぶん前のことのように思う。

まず、「中村竜治展」(08/5/22、OZONE)が素晴らしかった。入り口にあった箱展「insect cage」の美しいスタディ模型群に、あらためてほれぼれと見入った。
 さて、展示空間に入った最初に感じたのは、「写真と同じように白い」ということだ。だがもちろん、写真と実体験が同一であるという意味ではまったくない。写真は視角として白く、空間は経験として白い。スペースいっぱいに充満する白い光。数十枚の薄いクロスが天井から吊り下げられ層をなし、内側から大きな「かまくら」のようにえぐられ、一つの室が生まれる。クロスの素材感と、鋭利な刃物で掻き取らられたかのようなカーブが、絶妙にマッチしていた。
 一方で、えぐられて室内となった空間が、とても暴力的で唐突な現れ方だなとも思った。ある日突然、未知なる空間のただ中に放り出されたかのような経験だった。注意深く見上げると、展示の外側遠くに、天井面に走る規則的なグリッドが見える。天井面とクロスをつなぐテグスが見え、きわめて美しい収まりであることもわかった。吊られたクロスの裁断面が繊細にコントロールされており、そのエッジの表情が、空間の印象を決定づけているのだろうと思った。

 「バウハウス展」(芸大美術館)も面白かった。展示中盤の、学生たちが授業で提出した課題作品が興味深かった。眺めていると、同じ学生の名前が何回か登場している。ひとりの学生が異なる課題に対応し、そこに作風らしきものを感じることができる。ほんの短期間のバウハウスの輝きを、時代状況と重ねて知るのは愉快なことだ。

 そして、「ピーター・メルクリ×青木淳 建築がうまれるとき」(東京国立近代美術館)。キュレーターの保坂さんの慧眼というほかない好企画だと思う。青木さんはたくさんの模型を並べ直して、ひとつの建築がつくられていく様を展示。観客は文字通り紆余曲折しながら、思考の痕跡を目の当たりにすることになる。一方メルクリさんは、基本的にスケッチの展示。一群のスケッチは、隣接するスケッチ同士で微妙な差異を持ち、そのズレが、隣接する二枚の絵の間にある途方もない時間(長短とは関係ない)の存在を教えてくれる。
 対照的な展示方法も面白い。動線化された青木さんの展示に対して、メルクリさんの展示は一つ一つの作品に対峙することが要求される。会場構成を担当した西澤徹夫さんによると、入り口から一番遠い、一番奥の壁には一切展示をしたくなかったそうだ。
 なるほど、展示スペースを埋めようと思えば、白いままで残しておくのはいかにももったいない。しかし、真っ白なままの壁の前を歩いて、展示の続きを見に行こうとすれば、また青木さんの展示も見、一旦立ち止まると、展示室の一番奥から入り口付近を遠くに見やることになる。すると突然、展示スペースをひとつの空間として感じられる。ようやくメルクリさんの模型に辿り着いたときには、模型やスケッチが生み続ける差異を見つめ続けるという、不思議な快楽の虜になってしまう。絶妙な構成だと思った。
 それにしても、近美会館以後、なんと4つめの建築展だという。直近が「ポストモダン建築展」だったこと、回数の少ないこと、そして今回が青木×メルクリだったことなどを考えあわせているうちに、呆然としてしまった。

 最も近い時期に見た、世田谷美術館の「石山修武展」も良かった。特に、ドローイングのすばらしさが記憶に残って仕方がない。偶然聞けた、川合健二を語った連続講義も面白かった。丹下さんが与えるほんのわずかな設備スペースに込められた天才の発想。自由とは何か、と考えざるを得ない。さらに、昨日の新日曜美術館も興味深く見ることができた。今思うと、3月にインタビューして以来、石山さんが語る建築が頭から離れてくれないことに気づく。

 他にも、ROUND ABOUT JOURNALVol.8公開収録@神戸芸工大や、北海道で五十嵐淳さんにお会いしたこと、アーキフォーラムで1年間ぶっ続けでいろいろな方のお話をお聞きしたこと、藤村くんが返答してくれたBUILDING Kのこと、「批判的工学主義」を僕がどう考えているかなど、ここ数週間は考えごとをする機会が多い。

yamasaki


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2008年08月04日 23:32に投稿されたエントリーのページです。

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