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ゼロ年代の課題

筑波批評社という文芸サークルの同人誌『筑波批評』の最新号で巻頭インタビュー「批判的工学主義とは何か」が掲載されました。

『筑波批評2008秋』について

「批判的工学主義」とか「超線形設計プロセス論」などで述べて来た「データベースの書き換え」「場所性と作家像の再定義」「メディアのあり方」などの一連の主張について哲学を専攻するシノハラ氏と社会学を専攻する伊藤氏と共に議論しています。個人的にも、今考えていることが包括的にまとまった内容になりました。

インタビューしてきた!(9/10のインタビューについて)
インタビュー先をちょこっとだけ公開するよ。(藤村龍至についての紹介)

彼らの同人誌は11/9の文学フリマにて発売される予定だそうです。筑波批評社は東浩紀さん主催のイベント「ゼロアカ道場」に参加しているようで、何だか盛り上がっている模様

「批判的工学主義」などという、印象としては一見閉じているけれども、逆に異分野の人に通じるというのは「理論」の成せる技。もともとは南後由和さんの企画したコンビニのシンポジウムに出たときに配ったフリーペーパーを読んだのがきっかけで興味を持ってくれたようで、きっかけを与えてくれた南後氏には感謝しております。

昔、ブライアン・イーノのレクチャーにレム・コールハースやアレハンドロ・ザエラポロが来ていて、システム理論について議論していたのを見て、理論が分野を超えていくダイナミクスを感じたことを思い出します。今回の件は小さな出来事かも知れないけれども、主張が分野を超えて響いたと手応えを感じたという意味で、ひとつの成果を感じるものになりました。

12日、20:00OMAの重松象平さんインタビュー@BUILDING K。OMAの設計プロセスは、プロジェクトのスペシフィシティ(固有性)を頼りにスキームを発展させて行く、というアプローチらしい。自分のやりたいことはまさにそれで、聴いていてとても共感した。

ただ、Casa da MusicaやCCTVなどのアイコン建築のシリーズ以降、最近のOMAは迷走気味という印象もある。NYのコンドミニアムのプロジェクトは久々にOMAらしさを感じるので実現が楽しみだ。

17日、アーキニアリング・デザイン展のオープニングへ。展示は濃密で面白い。小西さんがいらっしゃったので一緒に見て回る。どれも面白いが、スカイハウス、ポンビドゥーセンター、モード学園スパイラルタワーなどが新鮮で印象に残る。

ひと通り見て、構造表現のフロンティアは平屋と超高層とドームなんだなと思った。ある高さ、あるスパンを超えると工学の割合が強くなる。構造と意匠の融合、工学と社会の関係という観点からいえば、40-50Mのビルで何ができるかを考えることも問いとしては面白いはず。

19日、7:00後輩KとNに手伝ってもらい、自宅の引っ越し。独立当初は事務所にしていたこともあり、UTSUWAやBUILDING Kの初期案などを生み出した部屋でそれなりに思い出深いが、9月末で東工大を離れたことと、事務所を高円寺に移して以来通勤に1時間くらいかかっていて体力的に辛かったので引っ越しを決意した。この機会に荷物も思い切って整理。もっとミニマムにしたい。

引っ越し後、へとへとになりつつ18:30日本女子大へ。シンポジウム「集住とコミュニティ コミュニティはデザインできるか」に参加。司会は篠原聡子さん、パネラーは東大の大月敏雄さん、URの井関和朗さんと僕。西川祐子さんや小谷部育子さんにもお会いする。

西川さんを含む4者の発表を聴き、後半がパネラーによる討論という構成。「若手建築家はコミュニティの問題をどのように見るか」を話して欲しいとのお題を頂き、80年代のニュータウン育ちというルーツも含めて感じたところをお話しさせて頂く。

専門ではないし、研究を共有しているわけではないという立場から発言を求められていたので緊張しつつも、発表は濃密で学会のようで面白い。「コミュニティ」とか「場所」とか「空間に意味を重ねる」とか、若手建築家の間ではまず議論されない話題ではあるが、発表を聴いてみると意外なほどダイナミクスがあり、逆に新鮮。

日曜日にも関わらずお客さんも集まり、程よく盛り上がって終了。打ち上げで関係者の皆さんといろいろお話しする。小谷部さんに「ニュータウン育ちの建築家に初めてお会いしたわ」と言われたが、あと20年くらいするとタワーマンション育ちの建築家が現れるに違いない。

22日、14:00日刊建設工業新聞の80周年記念号に掲載予定の若手建築家座談会「21世紀の建築・都市」に出席@建築会館。五十嵐太郎さんが司会進行で、メンバーは平田晃久さん、中村竜治さん、福屋粧子さん、吉村昭範さんと僕。

最初に五十嵐さんからベニス・ビエンナーレについて、繊細な日本のデザインと世界のデザイン潮流との距離などが報告され、討論スタート。「21世紀」「グローバリゼーション」「地域主義」等をめぐってそれぞれが持論を展開する。

新聞なのでわかりやすくと思い、建築家が建築家固有の思考と言葉と方法論を持って社会的諸問題に対峙する「建築主義」を唱えたら(例によって)批判が集中。

いや、グローバルキャピタリズムによって社会が流動化しているからこそ、建築はその思考や方法の固有性をまず主張しなければ、という至極真っ当な主張なんですけれどね。あるいはその真っ当すぎる主張が論争を誘発してしまうというか。

座談会をやりながら思ったのは、この日発言した「建築」にせよ、中村さんの「かたち」にせよ平田さんの「生成」にせよ、90年代の後半に「それを言ったら叩かれる」と思われていた一種の地雷タームをあえて復活させている点で共通しているのが興味深い。

例えば、平田さんは90年代にグレッグ・リンらが提唱した「ブロッブ・アーキテクチャー」のコンセプトを意図的に復活させている。座談会のなかで「90年代の試みとの違いは何ですか」と平田さんに聞いてみると、「身体性の有無」だと答えが返って来た。逆に平田さんに90年代のMVRDVの「データスケープ」との違いについて聞かれたので、同じく「身体性の有無」だと答えてみた。

90年代後半に設計環境のコンピュータライゼーションに伴って提出された「ブロッブ・アーキテクチャー」や「データスケープ」などのコンセプトが、身体性や建築性といった概念、場所性や環境といった社会の諸問題を伴って復活してきているのがゼロ年代の一側面なのではないか。

解散後、駅前のカフェでウラ座談会。「皆さんもっと『主義』とか主張してはどうですか」と勧めてみる。中村さんは十分に「かたち主義」だし、平田さんも既に「生成主義」なので、そのように主張したほうがわかりやすいのでは。

18:00事務所に戻ると、dot architectsの家成さんと大東さんが来てくれている。途中でISOLATION UNITの柳原さんも合流。BUILDING Kを見てもらう。その後近所の飲み屋で建築界や社会の諸問題について管を巻き→移動してしっぽり人生について語るコースで夜が暮れる。同世代で、互いに良き理解者であり、心おきなく意見を交わすことのできる貴重な友人たちである。

彼らは大阪ベースなので、近所に住んでいればもっとたくさん議論できるのにと思うが、逆に東京−大阪くらいの距離感がまたいいのかも知れない。2009年は彼らの個展も東京で開かれるとのことなので、たくさん絡めればと思う。

2009年の展開もだいぶ見えて来た。「ゼロ年代」もそろそろまとめに入らなければ。

(以下、『筑波批評』関連の情報を掲載しておきます)

『筑波批評2008秋』

目次
* 批判的工学主義とは何か——建築家・藤村龍至インタビュー
* アダルトヴィデオ的想像力をめぐる覚書——ゼロ年代的映画史講義・体験版(渡邉大輔)
* リアル入門——ネットと現実の臨界(工藤郁子)
* 文芸批評家のためのLudology入門——<ゲーム>定義のパースペクティブ(高橋志行)
* 工学の哲学序説(シノハラユウキ)
* 「コンテンツ植民地」日本(min2fly(佐藤翔))
* ケータイ小説の作り方——ケータイ小説家・秋梨インタビュー
* フィクションするとは一体いかなる行為か(シノハラユウキ)
* 兄弟という水平面/擬似的な垂直性(シノハラユウキ)
* フラグメンタルアプローチ(塚田憲史)
* &LOVE——『あたし彼女』『メルト』(塚田憲史)
* Synodos+筑波批評社
* 座談会 ニコニコ世代に歴史はあるか?

東浩紀氏主催の「ゼロアカ道場」についての情報
http://shop.kodansha.jp/bc/kodansha-box/zeroaka.html

「ゼロアカ道場」は、昨年の12月から講談社BOXと東浩紀氏がタッグを組み、若手批評家を育成するというものです。第一関門から第六関門まで設定されており、第六関門突破者には、講談社BOXのレーベルから1万部をもっての批評家デビューが約束されています。

同人誌を販売するイベント「文学フリマ」についての情報
http://bunfree.net/#l2

イベント名:文学フリマ
日時:08年11月9日(日) 11:00~16:00
場所:東京都中小企業振興公社 秋葉原庁舎 第1・第 2展示室
(JR線・東京メトロ日比谷線 秋葉原駅徒歩 1分、都営地下鉄新宿線 岩本町駅徒歩 5分

「文学フリマ」は、小説・詩・批評といった文章系の同人誌を作るサークルが集まり、販売するイベントで、今回が七回目となっています。筑波批評社は当日「B-62」というブースで本誌を販売しています。
http://bunfree.net/dai7kai/circle_detail.html#B62

彼らの挑戦に対し、「批判的工学主義」がどれだけ貢献できたかは定かではないが、頑張って欲しいと思う。
fujimura

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2008年10月24日 11:47に投稿されたエントリーのページです。

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