« ピーター・クック氏へインタビュー/伊東さんと会う | メイン | LIVE ROUND ABOUT JOURNAL 2009 開催決定!! »

超線形スタジオ/3つの壁を克服する

8日、13:00シンポジウム開始。席が伊東豊雄さんの隣だった。

曽我部さんに質問を振って頂き、話す。大人数のシンポジウムは1度しかチャンスは巡って来ないから、振られたときに話したいことは全部話すべし、ということで。伊東さんはメモを取りながらグラフィカルに話すことをデザインしている。その様子が隣で見ていて面白かった。

熊本に巨匠、ピーター・クックがやってきたということ、40歳も歳の離れた若手建築家と並んで壇上に並び、未来について語ることで世代をブリッジする。そんな伊東さんの意図や期待に応えることが出来たかどうか甚だ心もとないが、自分自身は大いに勉強させていただいた。

16:30シンポジウム終了。福岡から駆けつけて来てくれた井出君らと話す。しばらくして懇親会。九州大、福岡大、熊本大、鹿児島大、北九州市立大の学生諸兄と話す。20:00全体で記念写真を撮影し解散。

最後に巨匠に『ROUND ABOUT JOURNAL』を手渡す。ついにRAJが元祖オルタナティブ・メディア『アーキグラム』のリーダーに渡った瞬間である。このときにはすっかり打ち解けて「いい仕事をしたと思うよ」という温かい言葉とともに固く握手してくれた。偶然にも3日連続巨匠と時間を共有することとなったが、この経験を次の活動へと繋げて行きたい。

終了後、松原弘典さん、井出君らと共にロビーに溜まっていた学生を誘い、近所の居酒屋へ移動。議論の続き。ありがたいことに、九州の学生諸兄もこのブログの読者でほぼ完全に僕たちの議論の枠組みを共有している。そしていつものように藤村批判(?)が始まる。応えているうちに夜が更ける。23:00過ぎ解散。

9:00熊本発の飛行機で帰京。空港へ向かう途中、県庁の水上課長代理から電話。お礼を言って搭乗。11:00羽田着、事務所に戻って軽く打ち合わせたあと、16:00UBCのスタジオへ。

この日はスタジオ最終日。15人の残した約100個のスタディ模型を時系列に並べ、ゲストの乾久美子さん、松本文夫さん、木下庸子さん、今村創平さんを迎える。

今回のスタジオでは、「ジャンプしない」「枝分かれしない」「戻らない」をルールとする「超線形プロセス論」を教育プログラムに応用してみた。全員が最初から1/100の模型を作り、毎回記録として残してスタディを進めて行く。

学生によって従来通りかたちをイメージしてしまうなど、プロセスの飲み込み方に多少のばらつきはあるが、アイディアにこだわる必要がないので誰でも論理的にスキームを構築して行くことができ、最終的に大きな落ちこぼれを出さずに、誰もが構造や動線やファサードに意識を行き渡らせた案を完成することが出来た。

それはたまたま「盛り上がった」というような結果論的なものというよりも、もっと方法論的だったように思う。今まで東工大での設計製図や、いろいろな学校でのゲストクリティックに参加して来たが、こういう多様で均質な成果は見たことが無い。普通はもっと単純でばらつく。

よく見ると、最初のモデルで出来るだけ恣意性を排除できた人ほど後半の伸びが大きいと感じた。ヴォリューム、構造、動線、ファサードと条件を複雑にしていって、関係性は複雑だが形態は単純化するような、きれいなインテグレーションを見せた案もあった。反対に、最初に何らかの形をイメージしてしまった人ほどフィードバックが上手く機能せず、案が複雑性の方向へ発展しなかった。他方、恣意的なイメージを排除したままの人は後半でうまく伸びなかった。

そう、設計は論理だけでもダメ。感覚も重要。その感じを伝えるのは難しい。

ここから分かったことは、案の方向をリードするイメージを持たなくてはならないが、最初から出してはダメだということだ。なんと基本的なことか。

授業を通じて、「デザインのプロセス(結果論)とプロセスのデザイン(方法論)は違う、プロセスのデザインはデザインそのものを変える」ということを伝えようとした。最初は戸惑いもあったが、最後にはイメージを共有することが出来たのではないかと思う。教育もまたプロセス。また違う授業等で課題を出す機会があったら試してみたい。

10日、事務所を出て、12:00建築マンガのミーティング@外苑前。13:30工学院大学へ。この日は木下庸子さんのスタジオの最終講評会。3年生の集合住宅の課題。

ちょうど前日がUBCの講評だったこともあり、分析しつつみているとなかなか興味深かった。課題を観察しながらまず思ったことは、彼らの中に「3つの壁」があると言うこと。

1.平面の壁
2.断面の壁
3.イメージの壁

1は基本的な寸法が分かっていないのでモジュールに頼ってしまう人など。集合住宅のように単位が反復する課題だとすぐ「正方形をばらまく」とかやってしまう。模型でごまかされてしまうが、図面を見ると家具の寸法が取れていないのですぐわかる。

2は平面は充実しているのに断面が単調な人。天井高や階段をみるとすぐ分かるのだが、上下の関係まで頭が回らないパターン。

3は平面も断面も自由に描けるのだが、スキームを論理的にデベロップする訓練(考え方)が足りないので既存のイメージに頼ってしまうパターン。ちょっと前だとSANAA、最近だと藤本壮介が元ネタ。石上純也の模型やドローイングの表現を真似る学生は多いが、形式まで真似するのはさすがに難しいらしい。

この日、「3つの壁」を超え、自分の言葉で自由に建築を語ることの出来ていた人は3人だけだった。

3人には多様性とは何か、形態の問題なのか、言語的な問題なのか、その言語は与えたものか、発見されたものか、と議論をふっかける。言語をプロジェクトの固有性の中から発見し、多様性を表現できていた人は1人しかいなかった。彼は3年生としてはなかなかの実力だろう。

1の壁を突破できているのはだいたい半分。2の壁を突破できるのはそのさらに半分。3の壁を突破できるのはわずかに数人。ゲストで行くと学生に「うちの学校のレベルは?」とよく聞かれるが、不思議なことにこういう分布は学校によって変わることはなく、大体同じである。最近の学生は個性が無い、とかそういう言うことではなく、働き蟻の法則みたいなもので、昔からそういうものなのだろうと思う。

経験上、1については、基本的な寸法を教えてあげればすぐ克服できる。自分の家の実測等が効果的。2は断面図の訓練。慣れの問題。3はプロセスの問題。生徒にとっては「超線形プロセス」のように型を与えるとわりと理解しやすいように思える。

これらの「寸法で考える」「関係性で考える」「プロセスのなかで積み重ねる」「言語を構築する」こそは「建築的思考」の内実と呼べるものではないか。こういうことの全てをいきなり学生に求めるのではなく、水泳をバタ足から教えるように順番に教えていくと可能性が広がるかも知れない。

やはり初等教育は面白い。自分のデザイン行為そのものがよく見えますね。この日も勉強になりました。

さて、こうしている間にも、ビルと住宅の現場が本格的に始まって来ました。

BUILDING K日記
project KOH 現場 (12/5)
house H 建て方 (12/10)
house H 建て方 (12/11)

設計期間中は一生設計しているのではないかと錯覚するくらいだが、現場が始まるとあっという間である。思えば1年前はBUILDING Kの鉄骨検査をやっていた。竣工してからずいぶん経つ気もするが、まだそんなものなのだ。
fujimura

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.round-about.org/cgi/mt/mt-tb.cgi/159

About

2008年12月11日 01:34に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「ピーター・クック氏へインタビュー/伊東さんと会う」です。

次の投稿は「LIVE ROUND ABOUT JOURNAL 2009 開催決定!!」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。