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2009年04月 アーカイブ

2009年04月07日

森山茜/卒園式/神尾真由子/京都建築スクール

ここ3週間を備忘録的にメモ。父親目線(藤村くんのすすめによる)です。

13日は夜、RADで森山茜さんのレクチャーを聞きにいく。一年前に、代官山の修士設計展で宮本佳明賞を受賞したテキスタイルデザイナーだ。現在はスウェーデンのコンストファック王立芸術学校に留学中。展覧会の会場構成(というか展示空間をつくった)「Go Branc」の出来が出色。展示室の入口ドアをあけた瞬間に、風が吹き込む。その風圧で室内を満たす布がぶわっと膨らむ。その様子を動画で見た瞬間、すごい空間が生まれたんだなと確信した。質疑では、ファッションにおけるテキスタイルをどう考えているか、、また、布と布のこすれる音や匂い、触覚など、建築的な空間とはことなる、布でできた空間のもつ素材性をどう考えているのか質問したり。NUNOの安東さんとはまた異なるアプローチで空間をつくるデザイナーが、誕生しつつあると感じる。RADの場所力がすごい。

14日は、息子が通う保育園の卒園式に参加。といっても息子が卒園する訳じゃなくて、親の卒園ぶりを見に行く。そうやって卒園する親の姿を見に、実にたくさんの在園の保護者が卒園式に参加する。なにしろ、午後全部を使う長丁場なのだ。いわゆる卒園式的な儀式は早々に終えて、卒園児童の親たちが次々にスピーチの段に立つ。当たり前だけど、それぞれの家族にまったく異なる物語がある。スピーチの場で始まる夫婦のチャンバラとか、親本人が煩った大病とか(30〜40代は病気をし始める年代だ)、聞く方も笑ったり泣いたり冷や汗をかいたりで大忙しである。スピーチには夫婦関係のきわどさ・あやうさ、つまり濃密さが避けがたく露出する瞬間がある。それがめっぽう面白い。そんなストーリーが20数本もあるのだから。
ちなみに、保育所と幼稚園は管轄する役所が違うことに象徴されるように、その性格が若干異なっている印象を僕は持っている。名称が示す対象が真逆というか。
保育所は働く親、それも基本的に共働き家庭のための施設だ。だから子どものためというよりは大人のためにつくられた気配を感じる(厚生労働省管轄)。教育機関として運営される幼稚園にも(文部科学省管轄)、きっと独特のありようがあるんだろうけど、保育所の持つ一体感はちょっと言葉にしがたい。息子の卒園まであと2年。
帰り道、京大の前を通りかかって(保育所の行き帰りに毎日通るのだけど)、昨年の同じ時期に見たある看板を思い出す。実はこの時期は最終講義が目白押しで、日程を知らせる立て看板がいくつも立っている。理学部のある先生の退官講演のタイトルは、「できたこと、できなかったこと」。タイトルだけでごちそうさまな、最終講義にふさわしいすばらしいセンスだったと思いだす。

15日、兵庫県芸術文化センターに神尾真由子を聴きにいく。昨年秋に大植英次指揮の大阪フィルで聴いて、夫婦ともすっかり虜になってしまった。ブラームスの「ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための協奏曲」は思いのほかリズミカルかつスリリング。神尾さんは今回も存在感が際立っていた。休憩時間に館内をうろうろと探検。ドリンクのカウンターが2カ所あって、飲み物や軽食を手にするために延々並ばなくてすむのがいい。ホワイエの空間はしゃきっと背筋が伸びる縦長の空間。西宮北口にはこのくらいの控えめなスマートさが適しているのかもしれない。設計は日建設計。
プログラム後半はチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」。チャイコフスキーは希代のメロディメーカーで、つまり「必殺のメロディ」を書く人なのでどの曲もドラマチックなのだけど、悲愴は劇的な部分がややこれ見よがしにも思えて、個人的には、少し、白けなくもない。全体的に歌謡曲や演歌の領域に思える。4番や5番の荒削りな雰囲気や素朴さが後退して、演出的な要素がうまくはまり過ぎていているのかもしれない。
それにしても、座席が3階席なのでなにしろ遠い。5〜6階建てのビルがすっぽり入りそうな巨大な内部空間。気になったのは拍手の音で、いくら手を叩いても、拍手の音に参加できていないように感じた。でもまあ、もう少しお金を払って、1階で聴かないとなんとも言いようがない。全体的には十分満足。オーケストラも後半はのびのびしていたように思う。黒字をたたき出すなりの、運営の緻密さを感じる。
コンサート終了後、駅までの通路をぞろぞろ歩く途中(雨が降っても濡れない)、ジムでワークアウトを真剣にこなす人びとが、大きなガラス面の向こうにずらりと揃い、機械の上を走っている。そして、ガラス越しに、みなこちらに顔を向けている。向こうからは、こちらはどう映っているのだろう。

19日は、4月から始まる京都建築スクール(京大田路研、立命館八木研、京都工繊阪田研、京都造形松岡研、京都建築専門魚谷研の合同スタジオ)の打合せに同席する。昨秋から準備を進めてきた、「(都市をつくる)ルールのデザイン」を主題に3カ年計画で展開されるスタジオ。建築を規定する現行のしくみをリサーチして、新しいルールを編み出し、そのルールを条文化して他校に手渡し、自分たち以外のスタジオがつくったルールに従って設計を行うスタジオ。今年のテーマは「境界線のルール」。4月7日が初日である。


yamasaki

ご近所飲み会/プロ目線/批判的工学主義/アーキフォーラム/椿昇

21日はご近所を呼んで夕方の早い時間帯から飲み会。秋にはご近所になる予定の岡田さんご一家もご招待。家族みんなで数日前から心待ちにして、掃除、買い出し、料理で準備を進める。息子も「友達の家に行くよりも来てもらう方がうれしい」とインドア派を地で行く一言。集まったのは、全部で5家族19人。これだけ人間が集まるのだから、さすがにちっとも寒くない。当初はぎりぎりかと予想した家のキャパシティも、もう1家族ぐらいはなんとか入れそう。ご近所飲み会という訓練で、空間を使い切るポテンシャルが向上している。話題は、仕事や教育問題、持ち寄った食事のおいしさ、それぞれのナショナリティ、持ち寄った食事のおいしさ、について皆でがやがやと議論。僕ら夫婦が最も若輩者のせいか、学ぶことばかりで圧倒的に楽しい。23時解散。子どもたちを遊ばせていた部屋が壊滅的に汚れていたので真夜中に掃除。なんとか家らしくなり満足して25時頃就寝。

23日は藤崎圭一郎さん、藤原えりみさんらとお会いして西洞院錦小路で飲む。話題はメディアのあり方など。2次会では、「(山崎は)どういうつもりでRAJをやっているのか」とプロ目線で疑問を投げかけられる。プロ中のプロとのやり取りに緊張するが、岡田さんにフォローされつつ、自分なりの、場のつくり方についての考え方を話す。RAJでは、とにかくみんなが寄ってたかっている状況をつくることが一番大事だと思っているし、この場合はそこにもっとも批評性があると思う、とか。議論のサスティナビリティというものがあるはずで、それは単なる延命措置ではなくて、どう継続するか、という時間との戦いを意識しているのだなと自分で気づく。とにかく遅くまでお付き合いいただく。またぜひお話したいし、そのときにはもっと成長していなければと気を引き締める。岡田さんの机・いす研究も久々に聞いてやはり面白い。

27日は藤村龍至レクチャー。批判的工学主義についてまとめて考えるいい機会になった。それなりに分かっていたつもりだったが、細かいところをよく理解できた。一つ一つ問いを見つけてそれに答える。それを何十回も続けると、一石一鳥の案が一石二鳥になり、それが一石四十鳥になっていく。それまでの問題に必ず回答してある、という過程は強度が高い。藤村くんは模型に対しても、絶えず議論しているのだろう。だとすれば、議論の場の設計そのものが、設計の手法と化しているわけだ。
工学主義/反工学主義/批判的工学主義の枠組みに対応する建築家像は、それぞれ組織/アトリエ/新しいやり方、に対応しているのだが、それが「働き方のスタンス」に対応しているようで面白いなと思った。比較対照される1920年代の機能主義/反機能主義/批判的機能主義は、どうもそうではなさそうなのだ。どこで働くのか、という所属の問題になっているように感じた。だから社会学的な言説との相性がいいのかな、とかぼんやりと思う。
批判的工学主義の肝は、設計・設備・構造といった「建築をつくるいくつもの領域」からそれぞれ専門家を集めて、協同する点にあると思うのだが、その協同性がどのように新しく、過去と異なっているのか(あるいは「組織」と違うのか)を考えてみたい。単に「若いから誰も大御所化しておらず、だからできる」ということではないだろう(前川國男にしろ丹下健三にしろ、構造家との共同作業は欠かせなかった)。個人がその主体性を放つよう強烈に求められる点で、近代人がたどり着いた、「あるやり方」なのだろうと思った(逆に、属性の異なるいくつかの集団を傘下において、それぞれの集団にそれなりの主体性を求めるのが会社組織か)。個人がつながる協同性がどう新しいのか。その個々人だからこそ「クリエイティブなアーキテクチャ」を設計できるのか。4月10日のジュンク堂書店新宿店での難波さんとの対談を契機に、またどこか新しい思考にたどり着くのだろう。その後RAD事務所に移動して4時前まで飲む。

28日は藤村くんと森田さんを出町柳に送り届け、残りの午前中は掃除(毎週土曜午前)。午後から大阪に移動して、長坂常さんのアーキフォーラム。長坂さんは「リノベーションはかっこ悪くなりようがない」など名言を連発。「当たり前」を次々とひっくり返す手法は、一見トリッキーで驚かされもするのだが、実は、デザインにとってもっとも「当たり前」の態度なのかもしれない、と思い直す。奥さんは「会場からの質問で、質問する人が長坂さんの仕事にびっくりしすぎていたことにびっくりした」と言っていた。うん、そうだよね。長坂さんが言うところの「A面」の建築も見てみたい。途中藤村・谷尻両氏のいるバーに移動して(dotの家成さんが内装を手がけたらしい)3時過ぎまで飲む。飲み過ぎである。大阪にある奥さんの実家に泊。

29日は、京都国立近代美術館で椿昇展の最終日に滑り込む。素晴らしい。息子のマキも作品に興奮。現代アートの展覧会は子どもも好きなように楽しめるからいい。しかも最終日だったためか、作家本人が来場して、観客の質問やサインに応じていた。距離近すぎである。帰り際にマキが意を決して、「(そもそも)なんで宇宙に行くお話しなの」と椿さんに質問(!)。すると椿さんはマキの目をじっと見つめて、宇宙へ行きたいと願い続けた人間の欲望について、ガリレオの天体観測や、20世紀のロシアの気球から何から、手加減なしで(と見えた)、4歳児に熱心に話してくださった。最初は圧倒されていたマキも、一段落ついたところで、にやっと笑って「もっと聞きたい……」とつぶやく(!)。すると椿さんは「分からない話でも子どもって何か感じてくれるよね」と喜んで、さらにお話しを続けてくださる(ハンバーガーを食べるときは牛のことを思い出そう、とか。牛が生け贄にされる映像作品があった)。

見知らぬおじさんが自分のために、自分のまったく与り知らない、もう訳の分からない「お話」を楽しそうにしゃべってくれる。これは相当面白いに違いない。未知の絵本を読む面白さに近いのだろうか。絵本の絵の代わりに、ばかでかい作品がそこら中にあり、しかも作者がすぐそこにいて好きなように説明してくれる。最後は「たまにでいいから、空や雲や、木に留まった鳥とか、遠いところを見るといいよ。上を向いて歩こう」とすてきなアドバイスをくださった。帰りのバスを待つ間「今日はいいことばっかりある日やったなぁ」とマキもかなり満足げ。椿さん、ありがとうございました。


yamasaki

2009年04月09日

Starting Over

ずっと取り組んでいた『思想地図』vol.3用の原稿がほぼ収束。16,000字は人生最長の作文で四苦八苦してしまいました。気がつけば桜が満開。新しい季節の始まりです。

いくつかニュースです。

1. dot architects の個展始まりました。

ドット・アーキテクツ展「超並列」(建築浴のすすめ)
dot architects 展「超並列」@プリズミックギャラリー(sumica 02:21:23)

『1995年以後』でのインタビューやLRAJ2009をはじめ、数々のイベントで議論させてもらっているdot architectsの始めての個展です。進行中の「住宅00」、そのコンセプト・モデルである「超並列模型」、敷地の環境を映したムービー、の展示が文字通り「並列」されています。

オープニングで、「都市は超並列なのではないか」と大マジメに語っている家成さんに「そりゃそうだ」と思わずツッコミ入れたくなってしまったが、都市の都市性を形式知にしようとし(住宅00)、それをもう一度暗黙知化(超並列模型、都市)するという思考のモデルを、きちんと方法論のレベルで提出しているところが彼らの批評性であると思う。その意味でdot architectsは、クリストファー・アレグザンダーの『時を超えた建設の道』を継承していると言えるのではないか。

彼らの方法論がフィジカルに成立し、都市の建築たり得るのか。web的な想像力のなかでは自然に感じられる「超並列」というコンセプトも、フィジカルな空間ではアレグザンダーのごとく夢から醒めてしまうのか。彼らの挑戦は始まったばかりだが、ある方法論が異様な質を湛えた建築を生み出していることにとても共感する。5月17日まで。

2.非常勤講師 @ 理科大、首都大、日本女子大

今年から東京理科大学に加え、首都大学東京、日本女子大学で非常勤講師をさせて頂くことになりました。理科大(4年)、首都大(3年)は前期、日本女子大(3年)は後期です。

前期の課題をようやく提出しました。大阪のワークショップで得たことをフィードバックし、新しいスタイルの設計スタジオを展開したいと思っています。

大阪のワークショップで感想を書いてくれている人がいました。
建築合宿09(ケンチククラブ)

なかなか臨場感ありますね。ある原理について、皆で考えていくという経験はなかなか濃密なものがありました。彼らが今後、それぞれの大学に戻ってどういう展開を見せるのか、楽しみにしています。

3.『1995年以後』について

佐藤敏宏さん、西田亮介さんが私たちの活動について言及して下さっています。

斎藤歩に聞く(佐藤敏宏さんHP)その1
若手建築家はいま何を考えるのか(Tipping Point Blog)

佐藤さんによる斎藤さんインタビューは「建築あそび」LRAJ2009について『1995年以後』について、建築系ラジオ、10+1データベースへと話が展開します。斎藤さんの語り口がクールなので自分たちのことを書かれている気がせず、客観的に読めました。

西田さんのエントリからは「島宇宙の外から」の視点を知ることができます。佐藤さんと西田さんはIT+コミュニティという共通点がありますね。

売り上げの方は好調、おかげさまで南洋堂3月ランキングで3位(店頭1位)だそうです。ありがとうございます。

4.対談、インタビュー始まる

6日、日建設計山梨知彦さんと対談。昨年のシンポジウム、RAJ vol.8インタビューに続いて、お話しさせて頂くのは3度目。フレームを共有しているので、どんどん議論が深まっていく。短い間に同じ方と議論を重ねるのは効果的だなと感じます。

この日はBIM (Building Information Modeling) について、実際に活用している実務家に若手建築家がその可能性を問う、という企画。最初、電話がかかってきたときにはBIMのことはほとんど何も知らなかったのですが、その可能性を知るにつれて、自分たちのやっていることとかなり深く関わっているという実感を得ました。「超線形設計プロセス」がやろうとしていることはローテク版BIMと言えるし、そのめざすところは、批判的工学主義の方法論であると言えるのではないか。

9日はBUILDING Kにて建築学会斎藤公男さん、10日は新宿ジュンク堂にて難波和彦さんとお会いする予定。10日は難波さんの『建築の4層構造』と『1995年以後』をクロスさせる試み。既に満員御礼、立ち見も満席だそうで、今から楽しみです。
fujimura

2009年04月14日

ROUNDABOUT JOURNAL vol.8 coming soon!!

首都大、理科大で出題完了。早速議論が起こっているようです。

藤村龍至ショートレクチャー

最初はできるだけ何も考えず、プレーンでニュートラルな形態から始めるのがコツ。カタチをどんどんアウトプットしながらイメージを膨らませていくようにして、最初は機械のように無心で作業してもらえればと思う。

新しいスポーツみたいなもので、運動神経がよくて飲み込みがいい人もいれば悪い人もいる。最初は多少混乱するかもしれないが、逃げずに練習=スタディを繰り返して頂きたい。だんだん面白くなっていきますよ。

10日、現場定例のあと、新宿へ。18:00過ぎ、ジュンク堂へ。難波さんも到着。

難波和彦×藤村龍至トークセッション @ジュンク堂 新宿店(BUILDING M日記)
難波和彦×藤村龍至トークセッション(阪根タイガース)
1970/1995(Architectural Creation Garage)

この日のキーワードは「工学」。ひとつは工学と社会の関係、もうひとつは工学と建築の関係。社会工学+メタボリズムの破綻した「1970年」以後と情報化+郊外化の始まった「1995年」以後の状況を比較し、意匠論における「工学」の可能性を確認するという内容。

難波さん自身が「アトリエ建築家とハウスメーカーの間」と位置づける「箱の家」の立ち位置は「批判的工学主義」的だし、安藤忠雄的に「反復」的に作品を発表するシリーズ型の作品像は思考を外部化してフィードバック・ループを構築する「超線形設計プロセス論」的なので、様々なポイントで議論は交差した。

キーワードのひとつは「変数」。読み込みを増やすことはできるか。変数を減らさずに「統合」することはできるかと執拗に問いかけると、難波さんはポール・ヴァレリーを例に出して「いやぁ、若いね!自分も40歳まではそうだった」とコメント。ここがこの日の最大の対立点ではないかと思う。

この討議の内容は『建築雑誌』6月号、および10+1 websiteにて原稿が掲載される予定。ちょうど昨日、文字起こしが上がってきましたが、刺激的な原稿になりそうです。

終了後、松川昌平さんと斎藤歩さんと一緒に反省会。朝まで。

11日、百年記念館に塚本研のOBOGが集まり同窓会。昨年立ち上げられた際は仕切りをやらせてもらったが、今年は4期の仕切りでスタート。まずは恒例のつかもと師レクチャー。その後1期のメンバーが壇上に上がり、シンポジウム(?)。

この集まりの名前を決めるコーナーでは「百年ゼミ」と「ツカパー!」が候補に。つかもと師のジャッジで、前者が正式名称、後者が通称に採用。

その後、研究室に戻って2次会。はせがわと、後輩のう作とつかもと師に絡んでいると、議論は次第にマジモードになり、気がつくと全員参加(!)。

これまでも部分的に議論が盛り上がることはあるけれども、あくまで議論好きな一部のメンバーが発言しているだけだった。でも、この日は全員が参加して一体感。こんな状況は初めてではなかろうか。ちょっと感動。

名古屋の卒業設計イベントで会った森田恭平さんから連絡があり、来社。『1995年以後』を読んでインタビューがしたくなったとのこと。批判的工学主義や、建築家が言説を生産することの意味などについて1時間少々話す。

森田君のサイトで近々公開されるようですが、我々の活動に刺激を受けて行動に移す人が出て来ているのは嬉しいですね。刺激が足りない、と嘆いているばかりの諸兄も行動しましょう。新学期ですしね。

その他、『1995年以後』についていろいろ興味深い言及がありました。

1995年以後(AtsuyositeBlog)
建築家の話を読むのが好き という話(majime-note)
藤村龍至×藤本壮介 建築か社会か(kuro-nicle -chronicle-)
藤村龍至+TEAM ROUNDABOUT 役割の補完(kuro-nicle -chronicle-)
字引的書物(白線分析)

また、東浩紀さんからコメントがありました。

社会学者?(東浩紀の渦状言論 はてな避難版)

『思想地図 vol.3』に掲載予定の論考は、「批判的工学主義」や「超線形設計プロセス論」について、現時点で最も詳細にまとまったものになりました。貴重な機会を頂き感謝しております。また、『建築雑誌』6月号で掲載予定の「続・『批判的工学主義』特集」で東さんにもご寄稿頂きました。

難波さんにも「社会学者の動きに過敏に反応し過ぎ」とご指摘を頂いたので、僕の話し方が少し無批判に響いてしまっているのかも知れないのですが、東さんが書いていらっしゃるような「東浩紀=社会学者」という誤解も含め、一般的に建築関係の人は同世代の異分野の動きに鈍感かもしれないですね。建築界には「1995年以前の」ポストモダニズム言説の乱用世代のトラウマが根強くあるような気がします。

僕は彼らの言説を引用するだけじゃなくて、「自動的に設計されているように見えるかもしれないけれども、工学的アプローチを徹底することによって、そこには介入する余地があると思いますよ」とメッセージを返していて、そこが重要なのです。そうすると逆に「そのアプローチはweb的だ」と再び指摘を頂いたりして、こちらの思考も動的に進化していく。この「一緒に考える」感覚は、世代の近い論客と議論することの意義だと思います。

建築家にとっては法規制や市場ニーズ、クライアントや構造家との付き合い方と一緒ですね。うまく間合いを取りながらアウトプットし、そのことの意味をよく考えて次の創作にフィードバックしていけばいいのです。これは「1995年以後の」議論のかたちではないかと。

『思想地図』原稿がようやく脱稿し、RAJ vol.8原稿もまとまってきたと思いきや、『ユリイカ』と『新建築住宅特集』から原稿依頼、レモン画翠からゲスト講評出演依頼、日刊建設工業新聞、a+uから校正依頼、『建築ノート』から取材+座談会依頼。あとぽむ桂さんから『凸と凹と』についてレビューを書きなさい、という依頼(というか指令)が来ましたよ。

あと、GWは福岡に呼んで頂いています。詳細はもうすぐ発表できると思いますが、なかなか濃密なイベントになりそうですよ。福岡周辺の皆さんは一緒に盛り上がりましょう。

ちなみに、もうすぐタブロイド版フリーペーパー『ROUNDABOUT JOURNAL vol.8』が発行されます。コンテンツは超濃密!! 巻頭から巻末まで、刺激的なインタビュー、座談会、論考の数々が続きます。神戸、広島、東京(LRAJ2009)、大阪、京都で展開した議論の数々も収録。神戸>LRAJ>大阪、と議論が次第に進化していく様子がわかります。

福岡を皮切りに配り始められると思います。連休前後にはvol.3と同様、配布協力者も人数限定で募集する予定ですので、希望者は心のご準備(?)を。
fujimura

2009年04月19日

5/2-4, デザイニング展2009 (福岡)で、3日間で5本のトークイベントに出演します!!

福岡の建築家、井手健一郎さんにお誘い頂き、下記のイベントに参戦します。3日間で5本(!)のトークショーに出ます。

*(以下、概要です。)

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デザイニング展2009 公式トークイベント
ROUNDABOUT JOURNAL × DESIGNING
" TRANSMISSION " 2009.05.02.SAT --- 05.04.MON 3DAYS/5EVENT

デザインに関わる人たちが、「今、何をデザインしようとしているのか?」
ということを伝達するためのトークイベントを3日間/5回連続で開催します。
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#001 TRANSMISSION KICK OFF
テーマ:今、何をデザインしようとしているのか?
     [ 東京/地方・メディア/ローカリティ ]
日時:2009.05.02.SAT 14:30 --- 16:30
場所:デザイニング展2009メイン会場 [ 福岡市中央区天神1.7.11 イムズB2F/イムズプラザ ]
スピーカー:井手 健一郎
      藤村 龍至
コメンテーター:松岡 恭子
モデレーター:平瀬 有人

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#002 DESIGNING STUDENTS
テーマ:風景をかえるもの
日時:2009.05.03.SUN 14:00 --- 16:10
場所:デザイニング展2009メイン会場 [ 福岡市中央区天神1.7.11 イムズB2F/イムズプラザ ]
スピーカー:学生 [ 学生展出展者/9名 ]
クリティーク:藤村 龍至
モデレーター:井手 健一郎

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#003 SOUTH JAPAN STUDENTS MEETING
テーマ: 教育と実践・社会性と作家性
日時:2009.05.03.SUN 20:00 --- 21:30
場所:TIME & STYLE WESTEND( 福岡市中央区大名1-6-21 )
スピーカー:藤村 龍至
コメンテーター:平瀬 有人
モデレーター:井手 健一郎

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#004 リノベートのはなし
テーマ:何故残すのか、何を残すのか
日時:2009.05.04.MON 14:00 --- 16:00
場所:デザイニング展2009メイン会場 [ 福岡市中央区天神1.7.11 イムズB2F/イムズプラザ ]
スピーカー:井手健一郎・斉藤昌平・貞国秀幸・野田恒雄・春口治彦・松山真介
モデレーター:藤村龍至

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#005 若手建築家のアジェンダ [ 福岡 ]
テーマ:マイ・アイデンティティ
日時:2009.05.04.MON 19:00 --- 21:00
場所:紺屋2023 屋上[ 福岡市中央区大名1.14.28.屋上 ]
料金:1500円(1ドリンク+軽食付)
スピーカー:井手健一郎・イノウエサトル・清原昌洋・相良友也・平瀬有人・二俣公一
モデレーター:藤村龍至

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参加者 [ 50音順 ]
井手 健一郎 [ 建築家/リズムデザイン一級建築士事務所 代表/DESIGNING 共同主宰 ]
www.rhythmdesign.org www.designing10.jp
イノウエサトル [ 建築家/イノウエサトル建築計画事務所 代表 ]
www.inouesatoru.jp
清原 昌洋 [ 建築家/アトリエキューブ 代表 ]
www7a.biglobe.ne.jp/~atelier-cube
斉藤 昌平 [ 建築家/株式会社 斉藤政雄建築事務所 専務取締役 ]
www.sa-o.com
相良 友也 [ 建築家/相良建築工房 代表 ]
www.sagara.e-arc.jp
貞国 秀幸 [ プロデューサー/コヤマコンセプト株式会社 取締役 ]
www.kichi-project.jp
野田 恒雄 [ 建築デザイナー/no.d+a(number of design and architecture) 代表/TRAVELERS PROJECT 主宰 ]
www.travelers-project.com
春口 治彦 [ 不動産/有限会社 ひかり生活デザイン 代表 ]
www.fpchintai.com
平瀬 有人 [ 建築家/佐賀大学理工学部都市工学科 准教授/平瀬アトリエ ]
www.yha.jp
藤村 龍至 [ 建築家/有限会社藤村龍至建築設計事務所 代表取締役/ROUND ABOUT JOURNAL 共同主宰 ]
www.ryujifujimura.jp www.round-about.org
二俣 公一 [ デザイナー/ケース・リアル株式会社 代表取締役 ]
www.casereal.com
松岡 恭子 [ 建築家/東京電機大学未来科学部建築学科 准教授/株式会社スピングラス・アーキテクツ代表取締役 ]
www.spinglass.co.jp
松山 真介 [ 建築家/株式会社 アポロ計画 代表取締役/リノベエステイト 共同主宰 ]
www.apollo-keikaku.com www.re-estate.net

*(概要以上)

それにしてもすごい。最初に井手さんの企画案を見たとき、「体力もたないのでは」「声枯れるのでは」と思いましたが、面白そうなので受けて立つ(!)ことにしました(^_^)。

まもなくリリース予定の『ROUNDABOUT JOURNAL』vol.8 では井手さんのインタビューも掲載されています。福岡の建築家の皆さんにお会いできるし、DESIGNING展は一度見てみたかったので、今から楽しみです。GW、濃密な時間を過ごしたい諸兄は福岡に集まりましょう!!

関連して、本イベントの様子をリポートしてくれるブロガーを募集する予定です。詳細は後日、本ブログで告知しますので、乞うご期待!!
fujimura

2009年04月22日

教育と創作、作家と教育者

20日、首都大へ。第1回エスキス。

建築デザイン第1回エスキス(ARCHI-BLOG)
無くしたものはいらないもの 本物は手に残る(post_tokyo)
システムは作家性を超えうるのか(The things you own end up owning you.)
藤村龍至(NEED MORE)

1週目なので、ひとりあたり1,2個模型ができていればいいな、と思っていたら平均5,6個、多い人は12個くらい作って来ていた。ものすごい盛り上がっている。祭りですねこれは。

履修者が70人(!)もいるので途中からかなり素早く進めたにも関わらず13:00開始で終了は19:00。でも全く飽きなかった。よくいる「何もできませんでした」という人や、何もないのにしゃべるだけ、という人が全くおらず、とても生産的な雰囲気。

プロセスを語り、そのなかで発見したことを語るというプレゼは彼らにとっても初めてだが、見る方も初めて。少々不安だったが、深尾先生と助教の猪熊純君がきちんと論理を見て的確な指摘をしてくれたおかげでスムースにチェックができた。

チェックの内容はなかなか発見的だった。この日はボリュームスタディだったので「ボリュームを立ち上げたら圧迫感があったので小さくしました」という人が多かったのだが、必要な要求面積(100平米前後、最低90平米)をきちんと取った人は少数で、ほとんどは80平米台。ひどい人は70平米しか取っていない人もいた。立ち上がったボリュームの分節を工夫するとか、条件のなかで建築的な想像力を膨らませられた人は少ない。条件のなかでイメージを膨らませる思考を訓練しておらず、イメージに条件を合わせようとする思考だということがよくわかる。

他方、条件が同じで方法論を統一しているにも関わらず、不思議なくらい多様性が出ているのは見ていて楽しかった。例えば、駐車の方法など限られていそうなものだが、70人いて2人だけしか採用していない配置が見つかったりする。

出題するときにもう少し強調するべきだったかも知れないが、与条件を簡単に変える学生が多いことに改めて驚いた。与条件を変えてしまっては「手を使ってサッカーをする」みたいなもの。自由なようでいて、とても不自由な思考だということをまず伝えなければならない。条件とか制約とかルールというものは自由を制限するものではなく、むしろ不自由を開放する道具なのである。

そのように考えると、エスキスは模型に現れている曖昧な個性をひとりひとり立てていく作業となる。短いやり取りで、平凡なかたちが意味のあるものになっていく。それをただ繰り返せばいいのだと思う。

だから、「君は天才だ!」とか、「お前は建築家になれない!」とかいう必要がない。僕が学生のとき、よくそういうことを言う先生がいたが、生徒のやる気と可能性を削ぐだけである。もっとふつうにコミュニケーションすればいいのだ。

エスキスしながら、そんなことを考えた。

終了後、猪熊君と食事でも、と言っているうちに、飲みますか!みたいな話になり、スタジオに残っていた学生20名前後とともに居酒屋へなだれ込む。しばらく学生と話していたが、いつものように(?)猪熊vs藤村の対決図式へ移行。やがて門脇君が藤村側に味方することで猪熊君を追い込み、学生がそれを眺めているという構図へ。

対立のポイントはいわゆる作家性の問題である。「方法論は天才を生まない」という典型的な作家主義者であるロマンチスト・猪熊氏(アトリエ派)と、「天才は勝手に方法論を超えていく。凡人を『意味のある凡人』にすることが最も重要」と主張するリアリスト・藤村(批判的工学主義者)のディベート。

さらに議論は創作と教育の関係、作家と教育者としてもスタンスの問題へ及ぶ。僕は創作も教育も、さらにいえば批評も研究も、全部一貫して考えたいと思うのに対し、猪熊君は「教育は教育、創作は創作」だという。作家としてのコンセプトと、教育者としてのコンセプトが一致していないのは思想として矛盾しているのではないか、と問いつめるが猪熊氏は「バランスが大事」などと真っ当なことを言う。それはずるいのではないか、スタンスが問われるのでは、と追い込み学生に意見を求めると、藤村批判派と擁護派が現れ、クリアなディベートとなる。

課題の最終日に飲むことはあるが、2週目に飲むというのも悪くない。緊張がほぐれ、コミュニケーションが円滑になったところで議論をすると、論点を共有することができる。

もっとも、言わせておけば「藤村さんは『批判的工学主義』とかいいながら、結局作品をつくろうとしているのではないか」とか、「難しく言い過ぎなのではないか」などとなかなか生意気(褒め言葉)なことを言うが、そういう意見が次々に出てくることはむしろ嬉しい。

考えてみると、この課題は学生にふたつのことを求めているのだと思う。まず、課題が示す方法論に対してはロールプレイとして無批判に従って欲しい。しかし、その理念に対しては常に批判的にディベートして欲しい。全員が同じ結論に向かう必要はない。むしろこの課題の提出する理論や方法論をたたき台にして、自分のスタンスを明らかにして欲しい。

当たり前のことではあるが、そういう活発なコミュニケーションを誘発する具体的な方法論を、ここでは探ろうとしているのだと思う。この課題を通じて自分の考えがクリアになれば、みんなもっと建築が好きになるのではないか。
fujimura

2009年04月23日

「デザイニング展」トークショーのレポート執筆者を公募します

先日告知させて頂いた通り、5月2日から5日まで福岡で開催される「デザイニング展2009 公式トークイベント ROUNDABOUT JOURNAL × DESIGNING " TRANSMISSION " 2009.05.02.SAT --- 05.04.MON 3DAYS/5EVENT」のレポートを執筆して頂ける方を公募します。

条件は下記のみ。

1. ブログを有していること(新規立ち上げ・匿名・ペンネーム可)
2. 期限(翌日)までにレポートを執筆し、公開できること
3. 5月2日のキックオフ・イベント(#001)に参加できること

ご協力頂いたサイトはRoundabout Journalにて一斉にリンクさせて頂きます。

募集:5名程度(定員になり次第締切)
内容:建設的な内容であれば自由です
字数:読みやすい長さであれば自由です
謝礼:恐れ入りますが、粗品の進呈をもって代えさせて頂きます

学生/社会人、建築関係/それ以外の別は問いません。
メールにて下記宛先までご応募下さい

応募先:藤村事務所「デザイニング展トークイベント」レポート執筆者募集係
nishimura*ryujifujimura.jp(*を@に置き換えて下さい)
担当:西村

福岡の若手建築家たちが生み出す、濃密な議論の場にコミットしたい、
意欲的な皆さんのご応募をお待ちしております。

学生の皆さんは、いい経験になりますよ。

ご応募お待ちしております!!


fujimura

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