表参道GYREで開催中のARCHITECT 2.0展、おかげさまで動員も好調のようです。
松島JPが日記をうぷしていますね。
7/31 (STUDIO LITHIUM diary)
それでは、恒例の全コンテンツ解説を。
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会場ではまず、「戦後日本建築史マンガ」が時代を切り取ります。
1.1945-1970
テーマはビジョンとリアリティの関係。経済の成長と技術の発展が著しい時代には、ヴィジョンとリアリティが緊張関係を保つことができた。博士と市長のコミカルなやり取りは科学と政治の緊張関係が、手塚、アトム的なタッチで描かれます。
2.1970-1995
ここで描かれるのは資本主義と作家性の関係。巨大建築論争からバブル建築に至るまでの建築の巨大化と、それがもたらしたアトリエと組織の乖離およびそのカップリングが、ジャンプ(=商業マンガ)ふうの劇画タッチで描かれます。
3.1995-2010
最後は萌え系マンガで現代を描きます。脈絡のない学園マンガが教室を暗示する均等なコマ割りをベースに描かれ、ヲタキャラがその周辺を埋め尽くします。最後にそれをギャルがくるっと丸め、深層を規定するエンジニアの存在と次なる展開を暗示します。
時代毎に天丼+夢オチ、少年漫画+少女漫画、ギャル+ヲタというベタな表現を展開しています。RAJや建築雑誌でコラボしてきたmashcomixの皆さんが、それぞれの持ち味を活かして3名ずつ、合計9名のチームを組んでくれました。ミーティングでセッションを繰り返してストーリーをつくり、赤入れしながら絵を完成して行くプロセスは、単なる原稿依頼というよりはセッションと呼ぶにふさわしい作業だと思います。
越澤太郎さんによるキャッチコピーにも注目。越澤さんは私が携帯電話のCMに出演させて頂いたときのコピーライターです。mashのマンガのラフが上がってきた後、越澤さんともセッションを行い、一緒にコピーを練って行きました。こちらは初めてのコラボでしたが、非常に刺激的でした。
マンガにしろ、キャッチコピーにしろ、簡単そうで難しい、実に絶妙なバランスの上に成立する表現だと思います。我々の込み入ったコンセプトをmashcomixがビジュアルで、越澤さんがキャッチコピーで、うまく開いてくれました。
会場では、それぞれのマンガに解説がついています。マンガも広告も本来、解説はタブーとされていますが、本展ではあえて詳しい解説を加え、説明主義的にプレゼンテーションしています。昨今の作家の寡黙主義に対する批判でもありますね。
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次に、出展作品に移りましょう。
1.せんだいメディアテークコンペ応募案(古谷誠章)1995
いつか実物を見たいと思っていたコンペ応募当時の模型です。パネルは東京大学で開かれた「ヴァーチャル・アーキテクチャー」展当時のもの。アマゾンの書架システムのコンセプトが95年当時に提出されていたことが驚きです。当時は判断できなかった古谷案の批評性を、今なら冷静に判断できます。
2. 富弘美術館(ヨコミゾマコト)2005
カラフルな模型も楽しいですが、壁面のパネルにもぜひ注目して頂きたいと思います。シングルラインで描かれたサークル・プランが日を追う毎に濃くなって行き、フィードバックを繰り返してジオメトリーが濃密にされていくプロセスが一目瞭然。表層と深層をきっぱりと切り離しメタレベルに立つその設計者像は、とても現代的だと思います。
3. W-PROJECT(日建設計)2009
山梨チームの方々が、渾身のパネルを出展して下さいました!ファサードの部分模型+美しくレイアウトされたシミュレーション+ヒューリスティックなアプローチを描いたプロセス・ダイヤグラム。美術関係者も一様に驚いていました。チームワークを見せつけられました。巨大性と建築の固有性を示唆するそのマニフェストは、新しい地域主義の可能性を示唆します。
4. GYRE(MVRDV+竹中工務店)2008
MVRDVと竹中工務店の関係はバブル期によく見られた外タレとローカルアーキテクトの組み合わせにあらず。工務店がコンペを主催し、MVRDV案を選んでいるという関係が設計者像として決定的に新しいのです。表参道に並ぶ建築は、差異と言ってもしょせんファサードの違いに過ぎない、建築家が「表層を超える」と言っても、所詮はファサードのパターンが構造を兼ねただけじゃないか、と言っている(かのような)コンセプチュアルな模型が痛快!
5. 朝日放送(隈研吾+NTT-F)2008
GYREと並ぶ、ダブルクレジット型のプロジェクト。担当の藤原徹平さんいわく「ビルを一個でもつくったことがある人ならきっと伝わる建築」。アトリエと組織が手を取り合えば、都市スケールで建築的思考を展開できる。コストがないから、時間がないからといってあきらめてんじゃねえ!というメッセージが伝わってきます。
6. re: schematic (徳山知永)2009
石上さんや隈さんとのコラボレーションなどで活躍する徳山さんのドローイング・ワーク。プロジェクト毎に開発された専用のCADが生み出す固有の表現を、「新しい図面」と呼んでいます。設計作業の深いところへぽんと踏み込むエンジニアのフットワークに現代性を感じます。
7. 新スケープ(中央アーキ+樋口兼一)2007
徳山作品が新しい深層のメディアアート的な表現とすると、それと対称的なのが中央アーキ+樋口兼一の写真表現です。彼らは自分たちの観察する対象を「新スケープ」と読んで区別しています。アトリエワンのメイド・イン・トーキョーのような、「B級」に注目することで価値の転倒を目論むという意図もなく、淡々と日常を切り取る姿勢を3枚の写真が的確に表現しています。
8. Browin' in the Wind(伊庭野大輔+藤井亮介)2005
代官山インスタレーションで1等を取ったインスタレーション作品。CFD解析のような大量の矢印を並列させた作品は、深層に広がる情報空間を暗示します。
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会場では全ての作品にキャプションが長めに描いてあります。イントロの文章も含めて、ちゃんと読んで頂ければと思います。
なお、会場で配布しているアンケートは全部目を通しています。消費者がメーカーにクレーム付けるような調子で書かれたアンケートもたまにありますが、アンケートもコミュニケーションの手段です。匿名だからと言って汚い言葉でネガティブな印象ばかり書いていると、あなたのコミュニケーションのセンスが疑われますよ。僕らに手紙を書くつもりで記入すれば、もっと生産的な内容になるはずです。ネットも同じですけどね。
それにしても、今回はキュレーションという作業に大いに可能性を感じました。まだまだ勉強して次の展開を考えたいと思います。将来的にはコールハースみたいに本格的にキューションを展開してみたいですね。
今回は非常に限られた時間でのキュレーション・ワークでしたが、ARCHITECT TOKYOのラインナップとはまた異なるかたちで現代の日本を切り取るフレームの提示ができたのではないかと思っています。建築をリアリティをもって考えたい人に、ぜひ見に来て頂きたいと思います。
会期は30日までです。17日のみ、全館休業日なのでご注意。
fujimura