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戦力求ム

夏のイベントが終了し、9月は落ち着いて設計モード。住宅2つのほか、集合住宅等、いくつかの基本設計が同時進行し、事務所の模型の山が積み重なってきた。エスキスが楽しい。

さて、山崎泰寛さんのインタビューが佐藤敏宏さんのHPで公開されていますね。

2009年8月2~9日 ことば悦覧in京都 記録集 山崎泰寛さん編 

いろいろ知らなかったことがわかって面白かったです。ケンチクナイト、懐かしいですねw。

柳原照弘さんやdotの家成俊勝さんらが中心となって今月18日から開催されるイベント「DESIGNEAST」の「DESIGNLOUNGE」というコーナーで、20分のショートレクチャーをさせて頂くことになりました。大阪発のイベントなのに「EAST」と名付けるあたり、世界を意識した戦略を感じさせていいですね。

福島の佐藤さんに限らず、大阪の柳原君や家成さん、広島の谷尻さんや福岡の井手君など、状況を変えるべく行動している同世代の建築家には本当に刺激を受けます。メディアそのものがどんどん縮小していくなかで、本当に批評的で刺激的な状況は自分たちの手でつくる以外にない、という認識は、今では当たり前のこととして共有されていますね。

他方で、「自分たちの手でつくること」そのものには何の意味もないことを忘れてはいけない。問題は刺激的な状況に自分たちが包まれ、「刺激を得られる」かどうかであり、そしてそれを外部に「届けられる」かどうか。

・・・と意気込んでいるところで少し残念なエントリがあった。

「ARCHITECT2.0展」/「アルゴリズミック・デザイン」/「理論と実践」(建築について 地方から建築について考える)

「ARCHITECT2.0展」で藤村龍至氏との話に出た「アルゴリズミック・デザイン」について、建築系ラジオを聴き直したり、松田達氏のブログ、藤村龍至氏のブログを読み返してみた。(中略)

松田達氏のブログではより詳細に書かれていて、松川氏は「科学」、藤村氏は「政治」というメタファーで建築を捉えている。そして松田氏自身は「建築」がメタファーだ、と。「科学」や「政治」という建築の外部のメタファーではなく、建築自身を「建築的思考」をもってのみ「建築でしかできないこと」に到達できる、としている。(中略)

そして「建築という実作で勝負する」というスタンスは僕たちを勇気づけてくれる。建築を設計している多くの人たちは、独自の建築理論や設計論を展開させても多くの場合は誰にも相手にされない。それはある特別な人たちのみに開かれた世界。けれど、僕たちだって建築をつくることができて、実作・実践で勝負することには可能性は開かれている。(中略)

もちろん僕は設計論や方法論を軽んじているわけではなくって、それらはそれで可能性を広げてくれるし、それとは別に実作で勝負する世界があってもいいのだと思う。両者を横断することで、建築の可能性はより広がっていくのだろうと思う。けれどとにかく、少なくとも僕は、実作・実践で勝負をしていかなくてはいけない。

彼は地方在住の建築家であり、私たちの展覧会へ足を運んでくれ、ラジオの議論やブログのエントリ等もよく読んで下さっているという方なのだが、「残念」だと書いたのは、彼がここで得た結論が僕らが伝えたいことと全く逆だからである。

彼は地方の在住だからよく知っていることと思うが、現状では「実作」でいくら勝負したつもりであっても、それだけでは社会になかなか届かない。そもそもメディアは縮小傾向にあって掲載の機会は限定されているし、掲載されたとしても「建築」そのものが社会から乖離した現状では、そのメディアは専門家や一部のファンにしか届かない(=彼がいう「多くの場合は誰にも相手にされない。それはある特別な人たちのみに開かれた世界」)。

そのような現状で「良いものをつくれば届く」という発想はナイーブに響くし、「自分には関係ない」とやり過ごすのも消極的過ぎる。

もちろん、個人の主張が届く範囲なんてたかが知れているし、どんなにいいものをつくったつもりでも、上手く伝わらないし、伝わったところで、社会構造が大きく変わることはないこともわかっている。

しかし、だからこそ「戦略」が必要なのだ。僕らがイベントや展覧会を起こすのも、東京のメディアに頼らず自分たちの手でムーブメントを起こそうとする柳原君、家成さん、谷尻さん、井手君といった人たちに共感するのも、そこに「目標」があり、「戦略」があるからである。

僕らが「理論」で勝負しようとするというのも、それ自体が目的であるということは決してない。ひとつの「戦略」なのだ。すなわち、意味のある「理論」を提示すれば、必ず異分野の論客に届く。するとその論客はいろいろな媒体で僕らのことを取り上げてくれようとする。そこから輪が広がれば、いずれ社会全体に届くようなメッセージへと拡大する。「一般」にメッセージを届けるには、そのようなプロセス的な作戦が有効なのではないかと僕らは考える。

念のため補足をすれば、僕らは「理論」といってもそれのみを体系立てて論じる能力はない。「超線形」にしても、「批判的工学主義」にしても、生きて行くうえで、きちんとした設計料をもらって、個人的にも社会的にもクリエイティブだと思える仕事をするためにはどうすればいいか、自分たちなりに経験を分析して作戦にしたものを提示しようとしているに過ぎない。

逆に言えばそれは限りなく「実践」的な行為であって、「それらはそれで可能性を広げてくれるし、それとは別に実作で勝負する世界があってもいい」などという、生半可なものでは決してない。むしろ実践や実作で勝負をするためにやっているのである。

もし彼が現状に満足し、肯定しきっているなら特にいうことはない。しかし、現状に多少なりとも不満を覚え、将来に一抹の不安を感じて何とかしたいと思うならば、「理論」なり「イベント」なり「メディア」なり、他人を巻き込んで行動し、道を切り開こうとするべきではないか。

もっとも、彼のメッセージには僕らのプレゼンテーションに足りていないことを教えてくれるものだ。「クリエイティブな環境をつくりたい」というストレートなメッセージをもっと主張して行かないと、「あいつら、趣味で学生相手にフリーペーパーとか展覧会とかつくっていて、気楽なもんだね。俺は仕事、仕事」みたいな感想を持ち帰る人も出てきかねないということだ。

僕らは自分たちの不満や不安を解消するために、週末に少しだけ時間を割いて活動をしてきただけだし、そのことを誇大に宣伝するつもりはない。ただ、それだけのことでそこそこの情報は発信できるし、その姿勢を人に伝えようと努力していれば、同様の問題意識を持つ人とどんどん連係するくらいのインパクトは、誰でもつくることができる、ということは伝えて行きたい。

独自の活動を展開するための条件は、webがあるのだから東京でも地方でも違いはないし、むしろ人の繋がりが強い地方のほうが展開しやすいということを考えれば、「一般」という言葉を免罪符のように使って対岸にいようとするのはずるいのではないか。

それで何が変わるのかと、性急に答えを求める人もいるだろう。しかし僕たちは、単なる議論でも、「戦略」的に発信する限りにおいては、メッセージが届く範囲も少しずつ広がるだろうし、それが力になって環境も少しずつ改善して行くだろうし、それしか方法はないと考える。それは自分たちがRAJのvol.9までをつくってきて、はっきりしたことである。活動を開始した2007年頃には、ここまではっきり言い切れることはなかった。しかし、活動を続けていろいろな反応に揉まれて行くうちに、メッセージがどんどんクリアになってきていることは確かである。

・・・というようなことを悶々と考えていたところ、東浩紀さんが『週間朝日』でまるまる1頁を使って、その思いを伝えて下さいました。

資本主義への「埋没」「抵抗」でない「第3の道」探る若手建築家(東浩紀の「批評するココロ」)

藤村氏は「批判的工学主義」や「超線形設計プロセス論」を掲げる理論派の秀英です。(中略)

むろん僕には彼の建築家としての資質を判断する能力はありません。仄聞すると、業界内には批判的な向きもあるとか。けれども、彼の試みはまちがいなく現代社会の本質に触れている。今後、注目すべき人物だと思います。(中略)

藤村氏は建築家です。だから彼にとっての最大の幸せは、作品として個別にすぐれた建築物を完成させることにあるにちがいない。けれども彼は同時に、現在の閉塞状況が、そんな個人プレイをいくら積み上げても打破できないものであることをよくわかっている。(中略)

ぼくたちには彼のような知性がもっともっと必要なのだ、と思いを新たにしたのでした。

一般紙なので少し強めに書いて下さっていて恐縮ですが、建築領域以外に、東さんのような理解者がいてくれることは心強い限りですね。

東さんによれば、文学でも思想でもアートでも同じ光景が広がっているのだという。どう「同じ」なのかが説明できるならば、どう連係して行けばいいのかがわかるわけで、同じ社会に対峙する限り、どんどん議論を広げて行くことができるということでもある。まさに「理論」の力。

・・・とはいえ、我々も設計事務所として力をつけていかなくてはならない。いくら名前が広まり、メッセージが広まったと言っても、設計の技術が伴っていなくては説得力に欠けるというものだ。「理論の力」は訴えなければならない。ただ、それを訴えれば訴えるほど、「作品の力」も問われる。それは自覚しているつもりだ。

気負う必要なないが、緊張感は保って行きたい。

というわけで、藤村事務所ではスタッフ1名と、秋学期からのオープンデスクを若干名募集することになりました。興味のある方は、奮ってご応募下さい。

STAFF WANTED!!(藤村龍至建築設計事務所)

事務所そのものは、超線形的に発展し始めています。ユニークで力強い戦力を求ム。


fujimura

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2009年09月07日 08:56に投稿されたエントリーのページです。

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