先日お伝えした通り、五十嵐淳さんを中心として、北海道の皆さんにお招き頂き、北海道のイベントArchitecture December 2009 / ROUNDABOUT JOURNAL に参加してきました。
まずは「北海道の状況がどういうものか知ってもらおうと思って」という五十嵐さんのご配慮で、日本建築学会北海道支部主催の北海道建築作品発表会へ。この年に実現された作品を持ち寄り、相互批評するというイベント。大会のデザイン発表会のような雰囲気で、北海道中の建築家が一堂に会する。東京にはない雰囲気で面白い。
北海道ではその気候条件故にハウスメーカーが弱く、住宅作家が比較的多いそうだが、日建設計も北海道では別会社だし、アトリエブンクみたいな比較的規模の大きな事務所もあり、アトリエ派とソシキ派が拮抗しているのが面白い。後半の総括討議での話題は「風土」「温熱環境」「空間」だった。
会の最後に「東京から藤村さんがいらしているのでコメントを」と振って頂いたので恐縮しつつコメントを述べさせて頂く。
一般的に「風土」「空間」について議論するのがアトリエ派、「温熱環境」について議論するのがソシキ派というように言説が分かれるが、北海道では両者が一緒になってそれぞれの話題に対して議論する場が成立している。そのこと自体が興味深い、と述べさせて頂いたところ、壇上から「北海道の特徴を見事に言い当ててくれた」とコメントを頂いた。
その後、北海道大学の団体HAUS主催のイベント、「建築を話そう」へ出席。学生の作品好評ではなく、各自が話したいテーマを持ち寄り、討議すると言う試み。
講評ではもっと短い言葉で、言い切りの発表をして欲しい、と繰り返し述べる。確かに、「何がしたい」のかを「一言で述べる」のはなかなか難しい。それが出来る人のことを「作家」と呼ぶようなものなので、設計を学び始めた学生にそれを求めるのは無理難題ではある。何がやりたいのかがわからない。やりたいことが辛うじてわかる人でも、それが他の人にとってどのような意味があり、これまでの人のやり方とどう違うのか、説明の仕方がわからない。
しかし、今回は彼らにそれを求めた。我々もそうだが、シンポジウムにせよ、雑誌のインタビューにせよ、俎上に上り、衆目に晒されているうちに自分の考えを短くまとめ、伝えることができるようになる。練習次第なのだ。展覧会の構成などをしていても、展示慣れしている人ほど、少ない手数で強いメッセージを残す。石黒君も日本一決定戦にエントリした時点ではただの学生だったはずだが、審査の過程で様々な意味付けがなされ、揉まれて行くうちに、伝えるべきメッセージがクリアになり、「作家」になっていったのだろう。彼がこのイベントで周囲の学生に伝えたかったことは、そういう「作家として振る舞うこと」の意味だったのではないかと思う。
つまり、「建築を話す」とは、作家とは何か、作品を語るとは何か、について考えることなのだ。このイベントはその良い練習の場を提供したのではないか。
終了後、近所で打ち上げ。学生たちと絡む。
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一晩明けて、朝イチで五十嵐さんにピックアップして頂き、久野浩志さんの住宅「熊谷邸」と、高木貴間さんの住宅現場を見学に。どちらもとても面白く、興奮した。「熊谷邸」はヴォリュームのバランスとスケール、ディテールが面白い。高木さんの住宅は内部空間の構成が面白い。まだ発表されていないそうなので、雑誌掲載も楽しみ。
13:00から北海道組主催で僕のレクチャー。やりたいこと、それが社会的にどのような意味を持つのか、これまでの試みとどう違うのか、昨晩学生に問いかけたことを、自分なりに話す。今回は最初から最後まで、気持ちよく話せた。質問もたくさん出て、まずは成功。
15:00から再びHAUSのイベント「建築をもっと話そう」。昨晩のイベントで選抜された学生たちが討議。コメントしながら、twitterで実況も行う。だんだんと、twitterで学生の話を整理しながら進行すると、議論しやすいことがわかってきた。僕はカウンセラー体質なので、ついつい込み入って聞いてしまうのだが、それを画面上でまとめながら討議するやり方はなかなか新鮮。
glのふたりからはゼミみたいと言われた。確かに、僕が博士課程の院生。五十嵐さんが指導教官、でゼミをしているみたいな感じだったかも知れない。懐かしい。
17:00からはROUNDABOUT JOURNAL「若手建築家のアジェンダ」公開収録。神戸、広島、福岡と開催してきたシリーズの第4弾。まず北海道をベースに活躍する建築家であるgl(佐々木さん、関口さん)のおふたり、高木さん、久野さん、堀尾さん、五十嵐さんに「ローカリティ」をテーマにプレゼして頂く。5者のプレゼには相違点とともに様々な共通点がある。glの「日常」や五十嵐さんの「必然性」など、いくつかのキーワードが印象に残る。
その後、北海道建築の可能性について討議。討議では「北海道の冬を乗り越えるべきものとしてネガティブに捉えたくない。雪の美しさなど、ポジティブに捉えたい」という久野さんの言葉が強く印象に残る。
まとめとして、北海道建築シーンの特徴は1.フラットな風景、2.高い温熱環境のスペック、3.アトリエとソシキが拮抗していること、なのではないかと総括。その状況は、1.郊外化によって風景がフラットになりつつあり、2.環境問題によって温熱環境が盛んに議論されるようになり、3.少子高齢化によるメニューの多様化とマーケットの縮小により設計組織のあり方が問われている現在、北海道以外の日本も、すなわち東京も大阪も福岡も、全体が北海道化していると言える。つまり北海道の建築シーンは、日本全体の建築シーンを先取りしている。そのことが今回の討議でよくわかった。
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翌日、五十嵐さんの作品「光の矩形」を始めとしたいくつかの建築にご案内頂く。「光の矩形」が住宅然としているのに対し、新作である旭川の住宅は住宅に見えないスケール。光の取り入れ方とボリュームのつくり方には作品毎に展開があり興味深い。他にも窓は徹底的に消去する、寸法は平面で言うと1820とか、断面で言うと2100とか、割と普通の寸法を使っていること、構造は一貫して木造であること、仕上げやディテールの考え方など、ずっと話していると、五十嵐さんが建築で気にされているポイントもなんとなくわかってきてとても楽しかった。
そのほかにもいくつかの建築や現場を見せて頂き、通して感じたことは、多少断熱を怠ろうが、多少換気計画を犠牲にしようが建築が成立してしまう本州と違い、北海道の場合、その厳しい環境条件故に、どんなに過激な空間の提案をしようとも工学の層と空間の層を切り離すわけにはいかない、ということだ。そのことが北海道建築を重層的にしているし、建築の未来形を示してもいる。
つまり、僕らは北海道に学ぶべきなのだ。そのことを今回の一連のイベントや、冬の気候のなかで具体的に感じられたことが最大の収穫なのではないかと思う。
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今回は五十嵐さんや石黒君のおかげで、たくさんの建築家や学生たちと知り合えた。イベントで熱い議論を交わして、打ち上げに向かう時の高揚感が楽しい。全員と話をできたわけではないけれど、建築をやっている限りはまたどこかで会えるだろう。一連のイベントの実現に尽力された皆さんに感謝したい。ありがとうございました。
fujimura